年始に読みたい”日記”というジャンルー『83 1/4歳の素晴らしき日々』
- 1月2日
- 読了時間: 7分
更新日:1月2日
📍いつもブログを読んでくださりありがとうございます。
1月2日、三が日の中日になりました。
皆さんはいかがお過ごしでしょうか。
年末は少し気温が上がり、午後の光にほっとするような日もありました。
年始には、先月読んだ本を振り返り、いくつか印象に残った作品をご紹介したいと思います。

先月読んだなかで印象に残った本たち
先月特に心に残ったのは、以下の本です。
『ペナンブラ氏の24時間図書館』ロビン・スローン 著, 島村 浩子 訳
『眩』朝井まかて著
『もし私が人生をやり直せるなら』キム・へナム 著,岡崎 暢子 訳
『83 1/4歳の素晴らしき日々』ヘンドリック・フルーン著,長山さき 訳
どれも読み応えがありましたが、その中でも今回は『83 1/4歳の素晴らしき日々』について、少し詳しく書いてみます。
💬オランダで30万部の大ヒット小説
日記を書いていますか?
皆さんは、日記をつけていらっしゃるでしょうか。
あるいは、日々の出来事をメモのように書き留める習慣はありますか。
『83と4分の1歳の素晴らしき日々』は、オランダに暮らす83歳の男性が、高齢者施設(ケアハウス)での生活を365日分の日記として綴った一冊です。
2018年に書かれた日記なので、今から7年前の記録になりますが、刊行当時、この作品は「著者が仮名である」という点でも話題を呼びました。
🪞オランダ発『83 1/4歳の素晴らしき日々』の秘密について。コラムあり
老いの日常を描いた物語として
この本を読んで思い出したのが、アニメーション映画『しわ』です。
認知症の兆候が現れた男性が、高齢者施設で過ごす日々を描いた作品で、静かな余韻を残す映画でした。
『83と4分の1歳の素晴らしき日々』もまた、私たち誰にでも訪れる老後や、高齢化社会の中での集団生活を描いています。
それを日記という形式で表したものが、この作品だと感じました。
🪞最後にアニメーション映画『しわ』についてコラムあり
365日書き続けるということ
人生とは、なるべく愉しく時間をつぶすこと以上の何ものでもない、というのが彼の哲学 ーp20 . 83 1/4歳の素晴らしき日々より
365日、日記を書き続けることは、現役世代にとっても簡単なことではありません。
「今日は特に書くことがない」と感じる日も多いはずです。
しかし、この日記の書き手は、たった一日を除いて、毎日欠かさず記録を残しています。
ハウスでの出来事、仲間との会話、ささやかな楽しみ。
彼らは自虐的に自分たちを「オマニド」と呼び、クラブを作り、月に一度の外出を楽しみます。
日記は、気力を保ち、自分自身をユーモアで支える役割も果たしているように見えました。
その一方で、施設という場所ならではの「死」も、淡々と、しかし確かに書き留められています。
読後に残った手触り
読み終えたあと、まるでヘンドリック・フルーンの周囲で起きた一年間を、自分の知人の出来事のように感じました。
強い感動というよりも、じんわりとした手触りが残り、後を引く読書体験でした。
年始に、日記を読む
年始は、新しいノートを開き、目標を書き出したり、気持ちを整理したりする時期でもあります。
そんなタイミングに、「365日の日記を読む」という選択は、意外なほどしっくりくるのではないでしょうか。
もしご興味があれば、『83 1/4歳の素晴らしき日々』を手に取ってみてください。
ハウスならではのユーモアや皮肉、ウィットに富んだ会話が綴られており、とても読みやすい一冊です。
この本をきっかけに、私自身もあらためて、日記を書くこと、書く時間がもたらす静かな効能を大切にしたいと感じました。

🪞【コラム1】 老いることは、退屈することじゃない。オランダ発『83 1/4歳の素晴らしき日々』の秘密
「ケアハウスでの生活」と聞いて、どんなイメージを持ちますか?
静かで、退屈で、ただ死を待つだけの場所――?
そんなステレオタイプを、ブラックユーモアと熱い友情でぶち壊す一冊があります。
オランダで生まれた奇跡のベストセラー『83 1/4歳の素晴らしき日々』です。
👴 1. 主人公は、83歳と3ヶ月の「反逆児」
物語の舞台は、アムステルダムにある老人ホーム。 主人公のヘンドリック・グルーン(83歳と1/4)は、礼儀正しい老人を演じながらも、内心では施設の理不尽な規則や、愚痴ばかりこぼす入居者たちに毒づいています。
彼が仲間たちと結成したのは、その名も「老いてもまだ死んでない会」(Omanido)。
活動内容: 施設のルールをかいくぐり、美味しいものを食べ、遠足に出かけ、人生を最大限に楽しむこと。
身体のあちこちが痛んでも、尿漏れパッドが手放せなくても、彼らは「生きる喜び」を諦めません。このユーモラスな抵抗運動が、読者に痛快なカタルシスを与えてくれます。
🕵️♂️ 2. 著者は誰? オランダ中が探した「謎の老人」
この本の背景には、出版当時、大きなミステリーがありました。
著者の名前は、主人公と同じ「ヘンドリック・グルーン」。 あまりにもリアルな日記形式で書かれているため、「本当に老人ホームの入居者が書いた実話ではないか?」とオランダ中で憶測を呼び、メディアが著者探しに奔走する騒ぎとなりました。
その正体は……? 後に判明したのは、当時60代前半だった図書館員のピーター・デ・スメット氏。 彼は「有名になりたくない」という理由で、ベストセラーになっても一切メディアに顔を出さず、文学賞の授賞式さえ欠席しました。
「名声よりも静かな生活を好む」という著者の姿勢そのものが、この作品の持つ「ささやかな幸せを大切にする」というテーマと重なり、さらに人気を高めることになりました。
📖 3. 「尊厳ある老い」への問いかけ
認知症の進行、友との死別、安楽死の選択。高齢化社会が進む先進国共通の「重いテーマ」も、日記の中で淡々と、しかし温かい筆致で描かれています。
「老いることは、誰にでも平等にやってくる。でも、どう老いるかは自分で決められる」
そんなメッセージが、説教臭くなく、老人のぼやきとして語られるからこそ、私たちの胸に深く響くのです。
🪢4.結び
人生の黄昏時(たそがれどき)を、ただの「余生」にするか、それとも「素晴らしき日々」に変えるか。 ユーモアと少しの勇気が、その鍵になることを教えてくれる一冊です。
これからの人生を考えるきっかけに、ぜひ手にとってみてはいかがでしょうか。
🪞【コラム2】アニメーション映画『しわ』について
アニメーション映画『しわ(原題:Arrugas)』は、2015年にスペインで制作された長編アニメーション作品です。
原作は、漫画家パコ・ロカによる同名グラフィックノベルで、高齢者施設を舞台に「老い」と「記憶」、「人との関係」を静かに描いています。
物語の主人公は、認知症の初期症状が現れはじめた男性エミリオ。
施設に入所した彼が、同室のミゲルや他の入居者たちと過ごす日々の中で、環境に順応しながら、少しずつ変化していく自身の状態と向き合っていきます。
この作品の特徴は、老いや認知症を過度に悲劇化せず、日常の延長として淡々と描いている点にあります。
施設での生活には、退屈だけでなく、ユーモアや仲間同士の軽口、小さな楽しみも含まれており、その空気感は『83と4分の1歳の素晴らしき日々』に描かれる人々の姿とも重なります。
また、アニメーションという表現によって、老いの身体や記憶の揺らぎが柔らかな距離感で提示され、観る側は感情を強く煽られることなく、誰にでも訪れる時間として「老い」を見つめる余白を与えられます。
観終えたあとに残るのは、強い余韻や教訓ではなく、静かな感触です。
年始という時間の区切りに、自分のこれからの時間を思い描く際の補助線として、『しわ』はとても相性の良い作品です。
💬どうやって「老い」や「認知症」と向き合えばよいのか。本当に必要なのは「家族」か「友達」か…。
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