手仕事の温度が語るもの──パペットアニメーション版『ムーミン谷の彗星』を観て
- 2025年12月27日
- 読了時間: 4分
更新日:1月14日
📍いつもブログを読んでくださりありがとうございます。
今年も残りわずかとなり、年末の慌ただしさを感じる時期になりました。
そんな中、年内にどうしても観に行きたい映画Part2!があり、上映期間が短いこともあって、急遽映画館へ行ってきました。
ムーミンのパペット(人形)アニメーション映画『ムーミン谷の彗星』です。
💬今年8月はトーベ・ヤンソンの評伝を読んでいました
💬映画に読んだのは「ムーミン」シリーズの丁寧な入門書

ムーミン誕生の背景にあるもの
ムーミンの作者、トーベ・ヤンソンは、もともと画家として活動していました。
若い頃の彼女は、反戦・反独裁を掲げる政治風刺雑誌『ガルム』にイラストを寄稿し、権力者をからかい、古い社会システムを笑い飛ばすための少し風変わりなキャラクターを描いていました。
その中に現れたのが、のちにムーミントロールと呼ばれる存在です。
このキャラクターが、ムーミンの原点になりました。
『ムーミン谷の彗星』という物語
今回観た『ムーミン谷の彗星』は、第二次世界大戦が終わった翌年に発表された、ムーミンシリーズ第二作にあたります。
物語の中でムーミン谷を脅かす「彗星」は、どこか戦争という避けがたい脅威のメタファーとして感じられました。
抗うことのできない大きな力に直面したとき、私たちはどう振る舞い、何を守り、何を手放すのか。
そんな問いが、あの愛らしいキャラクターたちの物語の底に、静かに流れています。
いつも一緒にいる幸しあわせ
チラシに書いてある一言が沁みます。
劇場の空気と観客の存在
この日、劇場にいたのは15人ほど。
決して満席ではありませんが、静かに関心を寄せている人が確かにいる、そんな空気でした。
フェルト、布、毛糸、モール、ボタン。
手芸の素材で作られたキャラクターたちが、一コマ一コマ、丁寧に動かされていきます。
CGやAIによる滑らかで完璧な映像とはまったく違う、手作りならではの温度が、画面全体に漂っていました。
それは「古い」のではなく、むしろ今の時代だからこそ新鮮に感じられるリアリティでした。
物語の終わりに残る言葉
彗星は、地球をかすめるだけで去っていきます。ムーミン谷は壊滅的な被害を免れ、物語はこう締めくくられます。
家に帰ってイチゴジャムのパンケーキを食べよう。
そして、映画の冒頭に印象的な一言。
「何かを欲しがると、人生は複雑になる」。
ムーミンの物語には、ユーモアと同時に、人生の皮肉や哀しみ、単純ではない感情が必ず含まれています。
だからこそ、ムーミンは子ども向けでありながら、どこか大人のための物語でもあるのだと思います。
北欧神話的世界観と映像体験
ムーミンは、わかりやすい筋書きだけで語れる物語ではありません。
北欧特有の神話性、おとぎ話の構造、そして言葉にしきれない余白。
75分という短い上映時間の中にも、原作を少し知っていることで、より深く味わえる部分が確かにありました。
現代における映像体験として
CGやAIによる映像表現が溢れる現代において、このパペットアニメーションがどのように受け取られるのか。
それ自体も、非常に興味深い体験でした。
ムーミンシリーズ出版80周年という節目の年に上映されたこの作品は、キャラクター商品やテレビアニメとは異なる、「原点としてのムーミン」を感じさせてくれます。
もし機会があれば、ぜひ一度、静かな映画館でこの作品に触れてみてはいかがでしょうか。
💬鑑賞前の記録、映画内容とトーベ・ヤンソンについて
💬年内にどうしても観ておきたい!Part2|劇場案内

🪞【コラム】手仕事の、別の想像力
針と糸を使った制作をしている私にとって、このパペットアニメーションが持つ魔力は、とても魅力的で、同時に考えさせられるものでした。
布や糸、フェルトといったどこか「身近すぎる」素材たち。
それらは一歩間違えれば、簡単にチープと呼ばれてしまいます。
けれど、そのチープさを恐れず、むしろ引き受けた先に、別の次元のファンタジーが立ち上がる瞬間がある。
丁寧で丹念な手仕事は、CGやAIが生み出す完璧なリアルさとは異なり、触感や温度、人間の身体の痕跡を、確かに残します。
完成された世界観よりも、工学的に洗練された作品よりも、私は今、そうした触れられる想像力に強く惹かれています。
この映画は、自分の制作において
「素材とどう付き合うのか」
「手仕事をどう現代に置くのか」
その問いを、静かに投げかけてくれました。

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