top of page

2026展覧会レポート#24|創設90年記念河井寬次郎と濱田庄司@日本民藝館②

  • 4月5日
  • 読了時間: 6分

更新日:4月6日

📍いつもブログを読んでくださりありがとうございます。


「針と糸を巡る旅」シリーズと称して、針と糸・刺繍・服飾・テキスタイル・手仕事・暮らしと美をテーマに、美術館や展覧会を巡っています。


今回は以前から気になっていた東京・駒場の日本民藝館「創設90年記念河井寬次郎と濱田庄司」展へ足を運びました。


この記事は前編・後編の2回に分けてお届けします。

前編では、訪問のきっかけとなった読書体験や現代アートシーンとの対比、そして日本民藝館という建物・空間そのものの魅力についてお伝えします。


②河井寛次郎と濱田庄司それぞれの作品の印象、東西の手仕事をつなぐ併設展の発見、そして民藝館を訪れてあらためて気づいた、針と糸という手仕事の意味についてお伝えします。


💬2026展覧会レポート#24|創設90年記念河井寬次郎と濱田庄司@日本民藝館①



河井寛次郎の技巧と色彩、濱田庄司のおおらかな造形——ふたりの陶芸を民藝館で鑑賞。土と布、陶芸と刺繍、東西の手仕事がひとつにつながる体験を後編でお届けします。
2026年3月20日(金・祝)―5月27日(水)|「創設90年記念河井寬次郎と濱田庄司」展|日本民藝館

河井寛次郎——技巧と色彩の品格


河井寛次郎(1890〜1966)の作品は、技巧と色彩に優れ、品格があります。

凝った意匠と優雅さを湛えながら、しかし飾るためだけでなく実用できるという点が、民藝としての大切な核心だと感じました。


河井の技法でとくに目を引いたのが「練上手(ねりあげて)」です。

異なる色の土を練り合わせて文様を作り出すこの技法は、ちょうど金太郎飴を切るような具合で、断面に模様が現れます。

華やかで手元に置きたくなる作品が多い河井の器ですが、その美しさが日常の使用に耐えるものであることに、改めて民藝の思想の強さを感じます。


濱田庄司——のびやかな豊かさと、背筋を伸ばさせる力


濱田庄司(1894〜1978)の作品には、かたちのふくよかさ、大らかさ、のびのびとした豊満さがあります。


絵柄は植物や筆さばきの跡のような抽象的なものが多く、見ていると素直さや実直さ、素朴でありながら人としての大きさのようなものが伝わってきます。


ふと思ったのは、この筆の跡と、刺繍の一針一針は、同じものではないかということです。どちらも、手が素材に触れた痕跡です。

布の上に糸で線を引くことと、土の上に釉薬で絵を描くことは、道具も素材も違うけれど、身体が何かと対話しながら跡を残していくという意味では、同じ行為なのかもしれません。そう気づいてから、濱田の器がいっそう近いものに感じられました。


濱田の作品の前に立つと、こちらの背筋が自然と伸びてまっすぐ生きることが楽しくなるような気分になりました。

奇をてらうことのない土と火の仕事。

仕事の勤勉さと、健康な身体と精神。

働くことの素晴らしさ。

曲がったところのないまっすぐさ。


そういうものが作品ににじみ出ていました。

柳が「民藝」を語るときに用いる「自然」「美」「健康」「直観」という言葉を、まさに体で受け取るような体験でした。


河井・濱田ふたりの作品は、小さなものから大皿までサイズも様々で、多数展示されていましたが、どれを見ても飽きることがありません。むしろもっと見たい、もっとそこにいたいという気持ちになりました。


併設展——朝鮮陶磁から西欧の巡礼水筒まで


併設展では、日本の陶磁器以外に、朝鮮半島の陶磁器やキリスト教と民間信仰にまつわる展示もありました。


イギリス、フランス、スペイン、ポルトガルといった西欧諸国の品々が並び、想像以上に広い視野で「民藝」が捉えられていることに驚かされます。


とくに目に止まったのが、17世紀のポルトガルの板絵「聖人伝」と、16〜18世紀のイギリスの巡礼用水筒に使われた「スリップウェア」という技法です。


スリップウェアはバーナード・リーチも用いていた技法で、初めて実物を目にしましたが、マーブリングのような有機的な模様が印象的でした。

そして河井の「練上手」と模様の成り立ちが似ていることに気づき、東西の手仕事がどこかでつながっているような不思議な感覚を覚えました。


さらに広げると、このマーブリングのような模様は、染め布やテキスタイルの世界にも息づいています。

トルコのエブル(墨流し染め)日本の墨流し染め布を絞って模様を作るシボリ

異なる素材の上で、人は似たような模様を生み出してきました。


土でも布でも、素材に手を添えて偶然と必然のあいだで模様を引き出すこと。その根っこは、どこかひとつにつながっているのかもしれません。


奥にしまったままの古いもの


河井と濱田の器や陶板は、20世紀に作られたものであるにもかかわらず、年月を重ね、実用品として人々の生活の中で使われてきたような重みがありました。

新旧の境界がない不変性をもった形であり、色であり、品物。年季の入った古いものと並べても引けを取らず、むしろ調和して存在感を増す。

民藝館の什器の中に置かれても、浮くことがありません。


展示の中には、和紙に墨で描かれた掛け軸もありました。

柳は掛け軸に使う布にも古い布や端切れを集め、作品を引き立て調和させることにこだわったといいます。その話を聞いたとき、古い布に刺繍を施す沖潤子さんの手仕事がふと頭をよぎりました。

時を経た素材に手を添えて、新たな命を吹き込む。

民藝とわたしの針と糸が、ここでつながりました。


民藝館には衣類も展示されていました。

芹沢銈介の飾り布、半纏、そこに施された刺し子。

針と糸を巡る旅が、思っていた以上の意味を持ち始めたのは、この館を訪れてからです。

針と糸の仕事にはわたしたちのライフライン

生活するのに必要なすべてが含まれているのではないか

陶芸は染色につながり、染色は生活に結びつく。そのつながりの中に、針と糸もある。


民藝館という懐の広い場所。

靴を脱いで上がる場所。

人が育ち、生活する場所。

火鉢で暖を取り、温め合う場所。

寛ぎ、仕事をする場所。


わたしたちが心の奥底にしまったままの古い憧憬が、目を覚ます場所でした。


【創設90年記念河井寬次郎と濱田庄司】

会期:2026年3月20日(金・祝)―5月27日(水)

会場:日本民藝館

開館時間:10:00–17:00(最終入館は16:30まで)

入場料:1,500円


BASEでは2026年カレンダーやポストカードやドローイング作品を取り扱っています。是非一度ご覧になってみてくださいね。


noteではWixブログで書いた内容を、読みやすくわかりやすいテキストにしています。

毎週月・火・金曜日更新。

こちらも是非楽しんくださいね。


🌸4月1日更新【Pinterest】

制作途中のドローイングはこちらをご覧ください。

コメント


bottom of page