2026展覧会レポート#28|拡大するシュルレアリスム 視覚芸術から広告、ファッション、インテリアへ@オペラシティアートギャラリー
- 1 日前
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📍いつもブログを読んでくださりありがとうございます。
東京オペラシティアートギャラリーで開催中の『拡大するシュルレアリスム 日常を変える、世界を変える。』展に足を運びました。
本展は大阪で開幕し、東京へ巡回してきた話題の展覧会。
前期・後期に分かれたスケジュールで一部作品の入れ替えもあるとのこと。
期間中に2度訪れたら、新たな作品に出会える構成です。

見どころ
なぜ今この展覧会を開催するのか?
この展覧会の最大の特徴は、国内の美術館に所蔵される多様なジャンルの作品を一堂に集めた包括的な構成にあります。
なかでも注目する作品は、ルネ・マグリットの代表的モチーフである山高帽の男が描かれた《王様の美術館》(横浜美術館所蔵)と《レディ・メイドの花束》(大阪中之島美術館所蔵)が同じ空間に並んで展示されていること。
普段は離れた場所に所蔵されている二作品を背中合わせに展示した構成は、会場でもひときわ目を惹きました。
また、絵画や立体コラージュといった視覚芸術にとどまらず、広告・ファッション・インテリアの領域にまでシュルレアリスムの影響を読み解く視点も、大きな魅力です。そしてわたしが訪れたかった理由もこちらでした。
シュルレアリスムの発生から約100年を経た今、日本国内に所蔵されている優品を一堂に集め、シュルレアリスムの本質に迫ることを目的としています。
1924年のブルトンによる定義から、ちょうど100年前後という記念的な時機です。
ファッションとインテリア
美術館に生まれた解放感
鑑賞後にもっとも新鮮だったのは、第5章「ファッション——欲望の喚起」と第6章「インテリア——室内空間の変容」の2フロアです。
シュルレアリスムは書籍を通じてある程度「頭で知っている」分野でした。
しかし、マネキンが纏う軽やかなエルザ・スキャパレッリのドレスや香水瓶、アクセサリーが会場に置かれた途端、格式ばった美術館の空気がふっと緩むような感覚がありました。
絵画や彫刻を前にするとき、つい難解な文脈を意識して身構えてしまうのですが、デザイン的な要素を持つプロダクトはハイ・アートをぐっと身近なものにしてくれます。
インテリアのセクションで目を惹いたのは、スタジオ65による《ボッカ(リップ・チェア)》と、イサム・ノグチの《コーヒーテーブル》(1939年)。
いずれも図版では何度も目にしてきた作品ですが、実物が放つ存在感といったら、色褪せてはいませんでした。
また、近年テキスタイルへの関心が高まっているからでしょうか、ジョアン・ミロのタペストリーも展示されていました。ミロのタペストリーとはなかなか見ることができない織物です。埼玉県立近代美術館所蔵とのことでした。
織物の荒い布の表情と、ミロの原画は絵画とは違うあたたかさがありました。
室内空間に飾られる想定で作られていることを知ると、日常に「拡大」するシュルレアリスム運動ということになります。
こうした室内空間への関心は、展覧会の会場構成にも反映されています。
シュルレアリスムが掲げる有機的な形態(バイオモルフィズム)は、1930年代の幾何学的抽象とは真逆の方向性でした。合理主義・世界恐慌・機械主義への反発が、その背景にあります。
ウジェーヌ・アジェの写真、古き良きパリへの憧れ
個人的にもっとも好きな写真家でもあるウジェーヌ・アジェ(1857–1927)の写真を見られたことが喜びでした。19世紀末から20世紀初頭のパリを職人的な視点でカメラに収め続けた彼の作品を、実物で見られるとは思っていませんでした。展示されていたのは小ぶりなプリントでしたが、当時のパリの匂いや埃っぽさ、霞んだ空気まで伝わってくるようでした。
折しも映画『パリの花咲くエトワール』を観たばかりだったこともあり、古き良きパリへの憧れを思い出しました。
多面的で現代的な「シュルレアリスム」の解釈
視覚芸術から広告・ファッション・インテリアへと拡張するシュルレアリスムの文脈を、多面的かつ包括的に提示した構成は、きわめて現代的な解釈と感じました。
シュルレアリスムが、広告やファッション、インテリアなど日常に密接した場面にも拡がり、社会に対して政治・日常の両面からアプローチしていたことを体感できる展覧会でした。
【拡大するシュルレアリスム 視覚芸術から広告、ファッション、インテリアへ】
会期:2026年4月16日(木)~6月24日(水)
会場:東京オペラシティアートギャラリー
開館時間:11:00~19:00(入場は18:30まで)
入場料:1,800円
🪞巡回会場・会場構成・出展作家一覧
巡回情報
大阪で開幕し、その後東京へと巡回。
・大阪会場(終了)
大阪中之島美術館にて2025年12月13日(土)から2026年3月8日(日)まで開催。
前期は12月13日から1月25日、後期は1月27日から3月8日。
・東京会場(開催中)
東京オペラシティ アートギャラリー(ギャラリー1、2)にて2026年4月16日(木)から6月24日(水)まで開催。
前期は4月16日から5月17日、後期は5月19日から6月24日。
会場構成:全6章
オブジェ、絵画、写真などの芸術分野はもちろん、広告やファッション、インテリアなど日常にも拡大していったシュルレアリスムを、それぞれ1章ずつ、全6章の構成でたどります。
第1章 オブジェ ─「客観」と「超現実」の関係 シュルレアリスムとは、私たちが疑う余地なく現実だと認識しているものの中から、より上位の現実である「超現実」を露呈させることです。客体(オブジェ)として事象をみつめることで「超現実」と向き合ったシュルレアリストたちのオブジェによって、展覧会の扉が開かれます。
第2章 写真 ─ 変容するイメージ 19世紀前半に誕生した写真術は、被写体をそのまま写すという本来の役割を超えて、20世紀美術を彩る主要な表現のひとつになります。シュルレアリストはさまざまな実験的技法を駆使して、日常的なモチーフを斬新で謎めいたイメージへと変えていきます。マン・レイを筆頭に、多彩な写真表現が紹介されます。
第3章 絵画 ─ 視覚芸術の新たな扉 理性のコントロールから逃れようとする「オートマティスム」(自動筆記)や、関係のない物同士を脈絡なく並置するデペイズマンといった手法が取り入れられ、様々な表現が生まれました。マグリット、デルヴォー、ダリ、エルンストらの代表作が一堂に会します。
第4章 広告 ─「機能」する構成 デペイズマンやコラージュ、フォトモンタージュなどシュルレアリスムにおいて多用されたテクニックを発揮した、訴求力に富んだ広告に注目します。
第5章 ファッション ─ 欲望の喚起 シュルレアリスムはモードやファッションと近接する場にありました。ファッションデザイナーのエルザ・スキャパレッリは、ダリらともコラボレーションしながら奇抜なデザインのドレスや香水瓶、ジュエリーを発表しました。
第6章 インテリア ─ 室内空間の変容 日常生活の場である室内の安定した秩序を転覆させることには大きな意味がありました。室内に置かれる家具もまた奇妙なオブジェへと変貌し、有機的な形態は家具のデザインにも取り入れられるようになりました。
主な出展作家・作品
本展には国内各地の美術館から多彩な作品が集結しています。
主な出展作家は以下のとおりです。
絵画・オブジェ
ルネ・マグリット|《王様の美術館》(横浜美術館)、《レディ・メイドの花束》(大阪中之島美術館)
サルバドール・ダリ
マックス・エルンスト
ポール・デルヴォー
イヴ・タンギー|《失われた鐘》(豊田市美術館)
フランシス・ピカビア|《黄あげは》(大阪中之島美術館)
ジョルジオ・デ・キリコ|《福音書的な静物Ⅰ》(大阪中之島美術館)
マルセル・デュシャン|《帽子掛け》(京都国立近代美術館)
写真
マン・レイ|《不滅のオブジェ》(横浜美術館)
ヴォルス|《美しい肉片》(個人蔵)
ヘルベルト・バイヤー|《セルフ・ポートレイト》(東京都写真美術館)
ウジェーヌ・アジェ|《働く女性の部屋、ベルヴィル通り》(東京都写真美術館)
広告・ポスター
クルト・セリグマ|《国際シュルレアリスム展》(サントリーポスターコレクション)
フリッツ・ビューラー|ポスター《ジオデュの帽子》(宇都宮美術館)
サルバドール・ダリ|《アルザス、フランス国有鉄道》(サントリーポスターコレクション)
ファッション
エルザ・スキャパレッリ|イヴニング・ドレス《サーカス・コレクション》(島根県立石見美術館)、香水瓶《スリーピング》(ポーラ美術館)
インテリア・デザイン
スタジオ65|ソファ《ボッカ》(国立国際美術館)
文献・資料
アンドレ・ブルトン|『シュルレアリスム宣言・溶ける魚』初版本(岡崎市美術博物館)
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