2026展覧会レポート#65|「ほぼ、空:青木淳 + リチャード・タトル」@オペラシティアートギャラリー
📍いつもブログを読んでくださりありがとうございます。
開催前から、この展覧会を興味ぶかく感じていました。
青木淳という建築家の名前を見て、学生の頃、同級生が「気になる人」として話していたことを思い出したりもしました。
それなのに、正直どう見たらいいのか分からない。見ても理解できないのではないか。
そんな予感がありました。
そのため、実際に見に行くのも、最終日ギリギリのタイミングとなりました。

実際に見に行くと、会場入り口にあるいつものポスターが張っておらず、白く抜かれています。自動ドアの先に見える会場の様子は、どうやら薄暗いらしい。ポスターを張っていないという空白にも、意味があるようなないような、そんな問いかけも感じました。さらに後ろを振り返ると、いつものミュージアムショップがなく、商業施設に併設したギャラリーのように白壁と黒いカーペットのみになっていました。「?」マークが点滅します。
いつもとなにかちがう。という肌感覚が残る展覧会だと、まず思いました。
しかし「なにかがちがう」というわりには、会場そのもの箱の様態が変化しているわけでも、動線が変化しているわけでもありません。そして箱の中身はほとんど手を加えていません。
美術館という場所を、各人の想像力でモトに戻すような、そんな感じがしました。
モトに戻すというと、モトが何かということになるのですが。
「湿地」展で梅田哲也が会場内に足場を組み、普段は見れないような天井に近い場所まで動線を広げて歩かせたように、リチャード・タトルによる3つのエレメントのうちの「柱」が、視点を上に持ち上げる足場のようになっていました。オペラシティの天井の隅から隅までを見上げることは、普段はありません。こんな溝のような場に窓があるのか、と気づかされます。上を見上げたあとで、下に垂れ下がるロープをつけたバスケットと、もみの木から落ちた枯れ葉。そして色とりどりの帯。光を象徴しているものだといいます。この色は、タトルによって注意深く選ばれた組み合わせなのだそうです。
なぜ青木淳とリチャード・タトルなのだろう。
東京オペラシティ アートギャラリーのキュレーターが、青木とタトルをそれぞれ展覧会にしたいと考えていたことが出発点でした。二人には以前から面識があり、青木はタトルの作品に関心を持っていた。そこから「二人展」という案が生まれ、最終的にはタトルが「柱」「バスケット」「色の帯」という3つの要素を提示し、青木がそれを建築的に展開していきます。
階段を登ってさらに進むと、柱と天井の高さが詰まってきます。柱と天井の高さがほぼ同じになるフロアと、柱の上に登りきった状態になるフロアがありました。
階段を使って「ほぼ、空」に近い場所に身を置く、という想像を持って見ました。
冒頭に書いた「理解できないのではないか」というものに対して、まずそこに行ってみてぐるぐる歩いて、上を見上げて、階段を登って、下りて、野又穫さんの絵画に没入して、を繰り返してみたあとで、「面白い」という一言が辛うじて出てきました。
わたしが感じた面白さは「をかし」であり、どこか外部に属していました。
作品は開かれていてその中を動き回れるにもかかわらず作品の外側にいました。
青木が企画展示室・コレクション展示室・「project N」展示室・ミュージアムショップの4部屋をひと続きの空間として一体化したことで、各フロアの空気が大きく動くのを感じるところもあれば、逆に圧縮されて小さく狭く感じられるフロアもありました。照明も、自然光に任せた箇所もあれば、落とした箇所もあります。人の出入りがあって動く空気と、だれもいない美術館の内部に入って見たくなるような、余地の残された隙間。
そんな空いた展覧会だと感じました。
そして「ほぼ、空」の「ほぼ」は「大まかに」「おおざっぱに」「あらまし」という意味で使われていたこともあり、ものごとをおおむねで捉えるさまを表していました。
すると、おおざっぱに捉えて空に近いところ、足元の下なのか上なのか、外なのか内なのか。
自分がそこにいて、見えているものを、もう少し大きく捉えてみなさい、と言われたような気がしました。
会期:2026年7月18日[土]─ 9月23日[水・祝]
休館日:月曜日(ただし7月20日、9月21日は開館)7月21日[火]8月2[日](全館休館日)
会場:東京オペラシティ アートギャラリー
開館時間:11:00 ─ 19:00(入場は18:30まで)
入場料:一般 1,800円
🪞青木 淳、リチャード・タトルについて・会場構成・主な出品作品
青木淳(建築家)
1956年横浜生まれ。東京大学大学院修了後、磯崎新アトリエ勤務(1983–90年)を経て1991年に青木淳建築計画事務所設立。代表作は《遊水館》《潟博物館》《青森県立美術館》《大宮前体育館》《三次市民ホールきりり》《京都市京セラ美術館》(西澤徹夫と共同)など。アートワークや建築・美術・文学にまたがる執筆活動も行い、2004年度芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。
リチャード・タトル(美術家)
1941年米ニュージャージー州生まれ、現在はニューヨークとニューメキシコが拠点。1965年ベティ・パーソンズ・ギャラリーで初個展、1975年ホイットニー美術館個展で大きな反響。ヴェネツィア・ビエンナーレ、ドクメンタなど主要国際展に多数参加。絵画・彫刻・ドローイングの境界を横断する表現で知られ、2005–07年に全米巡回回顧展、2014年にテート・モダン/ホワイトチャペルで大規模個展を開催。MoMA、メトロポリタン美術館、ポンピドゥー・センター等に作品収蔵。
会場構成
建築家がタトルの展覧会構成を手掛けるのではなく、両者の対話によるコラボレーションという形式が特徴です。
タトルは今回のために3つのエレメントを考案:
ボイド管・断熱材・PCシートなどの建材でできた柱状の構造物
木の葉の上にカタツムリが載ったバスケット
色とりどりの色薄紙でつくった帯
青木は、過去に同ギャラリーの展覧会で使われた台座を再利用し、什器・椅子・照明などのユニットを制作・配置。
青木の提案により、企画展示室・コレクション展示室・「project N」展示室・ミュージアムショップの4部屋をひと続きの空間として一体化し、各部屋の役割の位置づけを入れ替えて混在させている。
限られた要素の組み合わせと、光と陰翳の関係によって、空間ごとに異なる表情を見せる構成。
出品リスト
公式サイトには独立した「出品リスト」ページ自体が用意されていません。
参考までに、同時開催として次の展示の観覧料が本展チケットに含まれます。
「青木淳が選ぶコレクション|収蔵品展087 寺田コレクションより」
「project N 103 東山詩織」
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