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2026展覧会レポート#69|ロベール・クートラス 無神論者の聖人@新潮社soko 青花室

10月9日
読了時間: 5分

📍いつもブログを読んでくださりありがとうございます。


新潮社 soko には、いくつかのギャラリーが入っています。


先日、3階の坂田室へ布の展示を見に行き、その真向かいの青花室で「ロベール・クートラス 無神論者の聖人」展が開かれていました。


最初は駆け足で見てしまったため、後日あらためて再訪しました。

クートラスの作品を初めて見たのは、2015年の松濤美術館です。

それ以来、約11年ぶりにまさか見られるとは思っておらず、ギャラリーも見過ごせないものですね。


新潮社 soko 青花室で開かれた「ロベール・クートラス 無神論者の聖人」展の鑑賞レポート。2015年の松濤美術館以来11年ぶりに見たカルトの小さな世界と、《僕のご先祖さま》のほくろの絵について書きました。
2026年9月23日ー10月7日|「ロベール・クラ―トス 無神論者の聖人」|新潮社soko 青花室



この展覧会は、堀江敏幸さんの『ロベール・クートラスをめぐる断章群』(新潮社)の刊行を記念したものです。『工芸青花』に8年間連載された随想が一冊にまとめられ、カルト(手札大のカード)やグアッシュなど約70点が展観されました。


最初の訪問のメモには、カルトをまとめて見られた嬉しさと驚きが記されていました。長いローテーブルに、カルトが木箱に入って並んでいます。お守りのような佇まいで、呪術的にも、聖なるものにも、儀式的なものにも見えました。

カルトはタロットカードをイメージさせるものです。それはすべて《僕の夜》という題が付いています。

「聖なるもの」と「儀式」は、クートラスの作品を見ると真っ先に浮かぶ言葉です。


コンクリートの壁面5面には、額装された作品が掛かっていました。

額は林友子さんによるものです。木の竿から加工し、色土や砂、ワラ、箔などを使って仕上げるそうです。作品ごとに額が違えば散漫になりがちにですが、同じ作家の手によるため全体のトーンが揃い、自然でした。

アンティーク調の棚には、クートラスを特集した雑誌や画集もありました。


松濤美術館では、作家の背景を解説するテキストがあり、境遇も含めて作品を見ていました。今回はギャラリーなので、キャプションには価格が書かれ、売却済みの作品には赤い丸シールが貼られています。図録もポストカードもなく、撮影もできません。今見ているものは、もう二度と見られないかもしれない。手元に渡った人のもとで大切にされていく、この一瞬の展示に間に合ってよかったと思いました。


2回目に訪れたときは、色に注目しました。

あの色は誰にも出せない色だからです。灰色をベースにした、埃をかぶったようなマットな色。古く、埃だらけのアトリエ。生活と場所と空気がひとつに混ざって、あの一色になるのでしょう。どれほどマネしたくても届かない世界。


そして私は、一枚の絵ばかり見ていました。売却済みの《僕のご先祖さま》の一枚です。聖職者のようにも道化師のようにも見える人物の、向かって右の目の下に、ほくろのような絵の具の雫ががありました。

12世紀の宗教画の聖人は、つるりとした肌をしています。けれどもこの絵では、筆からたまたま落ちた一滴が、ほくろのようにそこにあります。それだけで、この人物は私たちと同じ地平にいる在野の人になり、物語が生まれそうな気配まで漂っていました。

このシリーズは、中世風の衣装をまとった横向きの男性の像です。ムーミンに出てくる「ご先祖さま」に似た、北欧の面影もあります。


クートラスは、カルトを6000枚描いたといいます。そのほんの一部でも見られたことに満足しました。大型の美術展には向かず、派手さもありません。

手のひらに収まる、小さく親密な世界です。


木箱に入れるお守りのように、それぞれの作品は、それを求めた人の場所で、ひっそりと変わらない純潔を放ちながら、クートラスの「僕の」世界と「僕の」夜を生きていくのでしょう。



【ロベール・クラ―トス 無神論者の聖人】

会期:2026年9月23日(水祝)-10月7日(水)*9月23・24日は⻘花会員限定

休廊:9月30日

時間:12-18時

会場:青花室 新潮社 soko3F


🪞ロベール・クラ―トス ・展覧会概要・主な出品作品について


ロベール・クートラス(1930–1985)

パリ生まれのフランスの画家。

石工として働いたのち、リヨンの美術学校で学び、1958年にパリへ戻る。

1959年と1968年にパリの画廊と契約しましたが、画廊の注文に耐えられず、どちらも自ら解除します。その後は画材を買う余裕もない困窮のなかで、手札大に切ったボール紙に油彩で描く「カルト」、グアッシュ、テラコッタの制作に打ち込みました。1985年にパリで亡くなる。

遺作は、遺言により岸真理子・モリアさんが受け継ぐ。その尽力で、没後数十年を経て、東京とパリでの個展や作品集の出版が続き、再評価が進んでいる。

美術館での展覧会は、2012年シャルトル美術館、2015年渋谷区立松濤美術館、2016年ベルナール・ビュフェ美術館とアサヒグループ大山崎山荘美術館で開かれた。



展覧会概要

堀江敏幸さんが『工芸青花』で連載した随想が、『ロベール・クートラスをめぐる断章群』(新潮社、9/30発売)として書籍化。この展覧会は、その出版を機に開かれた。

展覧会名は、2003年の『芸術新潮』11月号に掲載された堀江さんの記事「無神論者の聖人 ロベール・クートラス」に由来します。

9/25には、岸真理子・モリアさんと堀江さんによる対談「クートラスと私たち」も開かれた。



主な出品作品

カルトやグアッシュなど、約70点が展観されました(販売あり)。公式HPで作品名が紹介されているのは次の2点です。

  • 《僕の夜》 1967–85年 油彩、ボール紙 約12×6cm

  • 《僕のご先祖さま》 1979年 グアッシュ、紙 35×27cm



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