パートナーは身体。|千早 茜『マリエ』を読んで
更新日:10月1日
📍いつもブログを読んでくださりありがとうございます。
千早作品5冊目。
タイトル「マリエ」には複数の意味が隠されています。主人公の女性は、自分の身体と嗅覚をベースに人との距離やつながりを確かめながら動きます。
自分とは境遇も背景も異なる女性ですが、かけ離れているからこそ、興味が尽きません。
もし自分だったら。
あのときこうしていたら。
まりえのような女性が隣人だったら。
縁のない場所にいる人が見ている景色や、色や匂い。
登場人物がまりえに話す一言一言のなかには、距離やバランスについて、その人なりの妥協点というか臨界点を示しています。
自分の身体が発する声なきサイン。記憶と心。
わたしはこの物語を読んでもっと自分の感覚にダイレクトに、もっと一瞬にだけ現れる映像や色彩を掴みたいと思いました。なぜならわたしのパートナーは他の誰でもないわたしの身体だから。
💬千早茜さんの読書レポートはコチラからどうぞ。
📚お皿の水たまり。
『マリエ』
著者:千早茜
出版年:2023年
出版社:文藝春秋
チーズから白濁した液体が滲み、オリーブオイルを弾いていた。
桃はもうぬるくなりかけてい、みずみずしさは水っぽさに変わっていた。
主人公・まりえは、7年暮らした森崎と離婚し、一人暮らしを始めた女性です。もうすぐ40歳。7歳年下の銀髪の油井に出会い、小麦粉料理を教えているうちに深い仲になります。それと同時に結婚相談所に通い、幾人かの男性を紹介されたうちの一人、本田と高尾山にハイキングをしに行きます。後日コロナに罹患し、油井にも感染します。それをきっかけに結婚相談所に通っていたことを知った油井はショックを受け、まりえの元を去ります、同時進行で元夫・森崎からも連絡が入ります。まりえが切ったつながりは簡単には切れずにいます。
”私はただ他人に自分の幸も不幸も決めつけられたくなかった”
”私は誰かといて、不幸になりたくなかったし、一緒にいる人に不幸だとも思われたくなかったんです”
人の幸も不幸も自分が決めてはいけない。みんないろいろであるにもかかわらず——
それでもまりえは、その「みんないろいろ」の中身を、自分の身体と嗅覚をベースに動きながら確かめていきます。
自分では覗けない身体の深い部分にできた子宮筋腫やポリープ。身体が彼女に伝える声なき言葉は、まりえの思考より先にあります。その信号をベースに、まりえは自分の行方を決めていくのです。
そんなまりえがパートナーに望むのは——
”世界を共有することなのかもしれない”
"色や匂いを記憶に刻んで、また季節が巡っても思い出したい。思い出してもらいたい"
油井の銀髪と桜が淡く発光する夜道。マリッジブーケの香りの香水「マリエ」。
まりえは身体の声をパートナーに、真新しい白いバラの香りに身を包みながら、かたちのない関係に進むだろうか。
お皿の上の水たまりのように、滲んで、弾いて、ぬるくなっていく。
まりえの関係はいつもそういう質感を持っていた。
あわせてどうぞ
詳しい活動はこちらから→【プロフィール】
お仕事のご相談はこちらから→【お問合せ】




コメント