見て、考えて、話して、聞いて、再構築。|稲庭 彩和子 著編『こどもと大人のためのミュージアム思考』を読んで
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週1回、美術館に行きブログやnoteで鑑賞レポートを書いています。レポートを書くのは、毎回どうやって書こうかと思案して、なかなか手が付かないこともあります。
この本はそんなわたしにとって、鑑賞の手がかりと、その後のレポートを書くときに参考になることを書いている一冊でした。
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📚掛け算。
『こどもと大人のためのミュージアム思考』
著者:稲庭彩和子著編 伊藤達矢 河野佑美 鈴木智香子 渡邊祐子
出版年:2022年
出版社:左右社
本書は、ミュージアムを企画し公開する学芸員がどのような意図やメッセージを持って展示を開催しているか、展示側から発せられる価値と、そこから自分が何を感じ発見し考えたかというふたつの価値が交差する「ミュージアム思考」について書かれています。
ミュージアムはこれまで「テンプル」——至宝を拝む神殿のような存在でした。それが「フォーラム」として、人々が集い議論が始まる場所へと意義を移行しつつある。こどもたちをはじめ多様な人々に開かれた共生的な場となるための実践が、本書にはたくさん紹介されています。
わたしたちがミュージアムに行く理由は何でしょうか。
「本物」と出会う体験は驚きと発見をもたらし、インスピレーションを与えてくれます。具体的なモノを前にして考えると、言葉以上に問いに自然と向き合えることもあります。本書ではよく観察して知らなかったことを発見し、考えを言葉にして人と話し、聞いて自分の認識を再構築する「VTS(ヴィジュアル・シンキング・ストラテジーズ)」が紹介されています。作品鑑賞だけでなく、所属するコミュニティや会社や家庭で起きる大小さまざまな問題にも応用できる方法だと感じました。
ミュージアムを出ると、現実との隔たりを感じることがあります。
そんなときに参考になったのが、メディアアーティストで筑波大学教授の落合陽一さんの言葉です。落合さんはミュージアムを「エンタメ」と「批評」のふたつの側から見ることを勧めています。エンタメ性とは与えられたものを純粋に楽しく受け取る学びであるのに対し、「なぜ」「どうして」と批評的に捉えることがもうひとつの視点です。落合さんは若いころミュージアムを出た後に、毎回記憶した内容をノートを付けていたそうです。これはアクティブリコール(能動的想起)にあたります。
わたしなりにこのふたつをどう取り込んでいくか試行錯誤中です。が、鑑賞を1回で終わらせないことをではないかと。ミュージアムを出た後、時間をおいてまた見に行く、エンタメとして楽しんだ最初の素直さが一旦静まり、2回目では見えてこなかった細部や部分に気づくことがあります。これは分散学習(間隔反復)にあたります。
本書では「持続的思考」というミュージアム思考のひとつが紹介されています。答えを急がず、問いを継続すること。さまざまなミュージアムに行き見る回数を増やすことと、2回見に行くことで、自分の身体を伴う言葉と思考の循環が起きます。必ずしも着地するような答えや感想でなくていい。じっと見続けたあとで残るもの、動いて時間を挟んで再度見ること。能動と分散と——それをこの本に加えたいと思いました。
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