心に秘めておけない。|垣谷美雨『あなたのゼイ肉、落とします』、『行きつ戻りつ死ぬまで思案中』を読んで
更新日:10 時間前
📍いつもブログを読んでくださりありがとうございます。
私は4年前から体重が4kg増えました。体力を付けたくて、体重も落としたくて今月から友人と朝のジョギングを始めました。運動・食事・睡眠、3つのバランスが整ってようやく健康な身体が維持できる。というのは頭ではわかっているものの強靭な意志がないと続きません。正論は美しい芸術を愛でるようなものです。あまりに事務的で、冷めているようにも感じることがあります。
しかし、その規則的で(芸術的な⁉)縛りがあればこそ、目に見えないモヤモヤを退治することにもなるでしょう。自分以外の人が見えていることを認識する。自分のメガネを外してみると、とんでもないほど自惚れた自分とキモい自分を発見しました。
自分自身を冷徹に忌避なく捉えることを求める2冊の本をご紹介します。
📚心のゼイ肉。
『あなたのゼイ肉、落とします』
著者:垣谷美雨
出版年:2016年
出版社:双葉社
この本は4人の「痩せたい人」を描く連作短編集。大庭小萬里がダイエットを指導しますが、実際には身体の脂肪だけでなく「心のゼイ肉」=抱えているストレスや思い込みを落としていく物語です。
ケース1では潜在的なルッキズムから太ってしまった女性、ケース2は因習的な家柄への反発が食へ向かい太ってしまった女性、ケース3は、父親への反発と抑圧から、自分を追い詰める生き方をして太った男性、ケース4は家庭環境の影響から栄養不足から太ってしまった男性を描いています。小萬里は人となりを見て、太った根本的な原因の元を辿り、本人に認識させ目を開かせるのを重視しています。一般的に良いとされている、食事前には、必ずキャベツの千切りを食べてお腹を膨らませておくこと。少なくとも夕飯は炭水化物を抜くこと。毎日ひと駅分は歩くこと。夜七時以降は食べないこと。などは解決にはならないとゼイ肉のモトになる部分に切り込んでいきます。
自分がこの本をいつ読むか、自覚症状があるときに読むか、気が弱っているとに読むかで小萬里の言葉の響きが異なるのだと感じました。
📚キモいわたしに気付いた日。
『行きつ戻り死ぬまで思案中』
著者:垣谷美雨
出版年:2023年
出版社:双葉社
「小説推理」に掲載されたエッセイ集。コロナ渦真っ只中に書かれた本作は、当時の底知れない恐怖と人間関係の密度について、政府の対応やワクチンなど、当時の閉塞感と暗さが閉じ込められたエッセイもあり、ありありと蘇ってくるものがあります。
垣谷さんの小説を読んでいて、エッセイに書かれた著者の感じ方や文章はここがベースになっているのかもしれないと思いました。あとがきで「執筆過程で当時の情景や空気感を思い出し、悲しくなったり、嬉しくなりを繰り返した」、「エッセイは小説の何倍も大変な精神労働だった」とあるように、わたしも読んでいて自分の直近の出来事を思い出し、悲しくなったりもしました。
例えば『挑戦か安定か』では’アドバイスを乞うてもいないのに助言したがる人が多い’と書かれているのを読むと、自分を振り返り、したり顔で無責任なアドバイスをしていた自分を消したくなったし、『男性から握手を求めてはいけない』の’いつの時代も「お父さんのような」だとか「お兄さんみたい」と慕ったり尊敬したりする女性がセクハラに遭ってしまう事件が後を絶たない’と書かれた箇所は刃物がグサリと身体に食い込むような感覚がありました。自分はその経験をないものとして、心に秘めて置くことはできないからでした。
垣谷さんのエッセイは『いまだ悪戦苦闘中』に続きます。「古い価値観や社会の不合理に声を上げ、自分らしく生きるための悪戦苦闘」というテーマにつながります。この2冊のエッセイを読んで、著者が自分の来し方を振り返ったように、私自身も自分の半生を振り返ると「キモい」と思えて仕方がない。考え方も行動も、です。
読むのも辛いが書くのはもっと辛い作業だったと推測します。いくつになっても年の数に比例せず、大人になるのは難しいものだと考えさせられました。
あわせてどうぞ
詳しい活動はこちらから→【プロフィール】
お仕事のご相談はこちらから→【お問合せ】



コメント