その日を精一杯終わらせた人の、ランチ|原田ひ香『ランチ酒 おかわり日和』を読んで
- 8月12日
- 読了時間: 3分
📍いつもブログを読んでくださりありがとうございます。
原田ひ香さんの「ランチ酒」シリーズ第二作目を読みました。
前作同様、寿司、焼肉、餃子、カレーなど、東京のさまざまな店での食事が登場します。
本作は料理そのものだけでなく、食事をすることで主人公が自分の人生や人との関係を少しずつ整理していく姿がより強く描かれています。
📚深夜の見守り、ランチと酒とわたし
『ランチ酒 おかわり日和』
著者:原田ひ香
出版年:2022年
出版社:日本実業之社文庫
主人公はバツイチのアラサー・犬森祥子。彼女の仕事は「見守り屋」。聞き慣れない職業ですが、深夜22時から早朝5時まで依頼者の自宅に出向き、そばにいるというものです。家事代行でも性的サービスでもなく、あくまで「見守り」。一睡もせずにその人の近くにいる。老いた親の夜間を安心して任せたい家族、一人では夜が怖い人、誰かにそばにいてほしいけれど頼める人がいない——そういう人たちのそばに、祥子はいます。
この仕事が終わる頃、世間ではちょうどランチの時間が始まります。祥子にとってはその日の夕食。食べたいものを直観に従って選び、アルコールでさらに美味しくする。なんだかテレビ東京でドラマ化していそうな内容ですが、今のところドラマ化はされていません。
本作には、祥子が個人的に抱えている物語と、祥子に関わる人々を通して自分の人生を立て直していくという内容が含まれています。見守りの依頼者ひとりひとりに個人的な記憶や背景があり、その経験から祥子にほっとするような視点やアドバイスをくれます。幼児から学生、社会人、一人暮らしの年配者、物書きの女性など、人々の夜を傍らで見守り、仕事を終えて美味しいものを食べて飲む。仕事して、食べて、飲んで、また仕事して。人と関わり、人に育てられながら、同時に悔やみ、疑い、持て余す。
祥子が選ぶメニューは、一仕事終えたあとのパワーチャージの意味合いもあってか、がっつり系が多い。ボリュームがあり、味付けも割と濃いめで価格はリーズナブル(わたしの歳だと、もたれそう)。おしゃれなカフェ飯でも、小ぶりで映える高めの食事でもない。こういうところにも、その日その日を精一杯終わらせるための栄養と心の回復という意味が込められているようです。
人を見守るという仕事は、楽ではありません。一対一で密室の空間で時間を過ごすことには、大きなストレスとエネルギーが必要です。だからこそ食べて飲んで、リセットして回復する必要がある。食事はただの栄養補給ではなく、祥子にとっての儀式のようなものかもしれません。
「ランチ酒」シリーズは第3作まで出版されています。面白かったのでこの夏すべて読んでみようと思っています。
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