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伏線も回収もない。それでいい。|藤野千夜『また団地のふたり』を読んで

8月18日
読了時間: 3分

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地上波で絶賛再放送中のドラマ「団地のふたり」を2話分見て、二人の掛け合いや生活、ドラマの雰囲気と設定に惹かれ原作を手に取りました。本作は前作『団地のふたり』の続編にあたります。


双葉文庫版『団地のふたり』は発行部数10万部を突破、続編刊行時には大きな注目を集めました。さらに、『団地のふたり』『また団地のふたり』シリーズ累計で17万部を突破し、その後2026年には累計24万部を超えるベストセラーとなっています。



📚ゆるく、平熱、贈与論

『また団地のふたり』

著者:藤野千夜

出版年:2026年

出版社:ポプラ文庫


主人公は幼なじみの「なっちゃん」と「ノエチ」。五十代になった二人が同じ団地に住み、毎日のように顔を合わせ、十代のように遊び、食べ、出かけ、まったりする——ただそれだけの日々を描いた連作短編集です。勝手気ままで神経質ななっちゃんと、ぐずぐずのんびり屋のノエチ。凸凹した二人の掛け合いが、心地いい。


他者の生活を覗き見て、共感したり、なるほどと思ったり、くすっと笑ったり。ある種の休憩所のような、気を休められる作品です。小難しくなく、説教臭くなく、伏線も回収もない。何も残らないといえばそうでもなく、読み終わるともう一度最初から読みたくなるのはなぜだろう。丁度いいバランスと、理想的な人間の距離感とノスタルジー。毒や辛気臭さをあっけらかんと喋ってどこかに飛ばしてしまう、この軽やかさ(案外難しいものですから)。


人との境界、友人、家族、隣人。その関係の中に配慮や贈与に対する大人の対応と気配りが混じっています。世間を知った者同士だから、その関係はゆるくつながっている。一話の最後には恒例の「本日の売り上げ」と「本日のお買い物」がおまけのようについていて、これがまた楽しい。


収支というのはうまくできていて、多くを得たら多くが出ていくものです。出ていく分は浪費ではなく、感謝・お礼・餞別・慰安として使われる。ささやかな美味しいものに変わる。人が毎日食べて飲まないと生きていけないように、お金も出たり入ったりのサイクルを途切れないよう小さく動かしていく知恵——なっちゃんの日々のネットオークションやフリマアプリだったり、ノエチの非常勤講師の掛け持ちだったり。

そのさりげない生活の描写の中に、現代を生き抜くヒントがひそんでいます。


本作には第五話まで収録されています。中でも第四話「思い出の食器たち」と第五話「いる?いらない?わからない?」が面白かったです。

第五話では、ネットオークションに出品するお宝を譲り受けるために、ノエチのお兄さん「あつ兄」のお嫁さんの実家へ向かいます。古い家の大きな物入れを整理しながら良さそうなものを引き取る——人の家の納戸や物入れから掘り出し物を探し、新たな引き取り手に渡す。そういえばこれは、以前読んだ朝井まかて『どら蔵』の骨董商の話とどこか重なります。時代は違えど、ものと人の縁をつなぐというのはいいものですね。

解説は窪美澄。



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