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一品でも多く見よ。|朝井まかて『どら蔵』を読んで

  • 2 日前
  • 読了時間: 2分

📍いつもブログを読んでくださりありがとうございます。


朝井まかての歴史小説。単行本で490頁の長編小説をご紹介します。

物語の舞台は江戸時代後期・天保年間(1830〜1844年頃)の大坂と江戸。主人公は「どら蔵」と呼ばれる大坂の道具商の息子、寅蔵です。奉公先の道具商に損失を与えてしまい勘当された寅蔵は、身ひとつで江戸へ向かいます。そこでひょんなことから江戸の骨董商に拾われ、目利き商人として数々の失敗や出会いを重ねながら成長していく物語です。



📚メルカリと競り、江戸の目利き。

『どら蔵』

著者:朝井まかて

出版年:2025年

出版社:講談社


朝井まかての筆は、骨董という小難しく玄人の世界を学術的・芸術的に描くのではなく、あくまで天保の時代に生きた商人や庶民の生活に根ざしたところで描いています。歴史小説でありながら職業小説としての側面が強く、読者は現代にも通じるヒントや知恵を自然に見つけることができます。


本作のユニークな点のひとつは、骨董商が富山の薬売りの手法——いわゆる「先用後利」の置き薬のしくみ——と掛け合わせ、江戸から離れた場所に住む人にも商品を届けられるよう工夫する場面です。現代の通信販売やネット販売の原型とも言える発想が、江戸の商人の知恵として描かれています。また、命がけで競り落とす瞬間の緊張感や、真偽だけが問題ではないという目利きの矜持が、読んでいてハラハラし興奮する場面として随所に登場します。


本作は2025年に出版されましたが、この物語の背景は現代と地続きです。誰もが手軽に売買できるメルカリに代表されるネットオークションも、いわば「競り」であり、勝負ごとでもあります。売り手と買い手の境界が混濁し、誰もが同じ土俵に立つ現代において、この物語は誰が読んでもヒントになる箇所があるかと思います。


一品でも多く見て、自分で値をつけてみる。その繰り返しによって磨かれる目利きは、誰に頼ることもない直観と実地経験の大切さを説いています。

情報が溢れ、AIが価値を判断する時代だからこそ、この言葉は重く響きます。

商売と目利き、ネットオークションとメルカリ。

どら蔵の世界は、現代につながっていました。




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