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2026展覧会レポート#27|中央アジアの手仕事 ―華麗なる刺繍とジュエリー 広島県立美術館コレクションより―@松涛美術館

  • 3 日前
  • 読了時間: 5分

更新日:2 日前

📍いつもブログを読んでくださりありがとうございます。


「針と糸」にフォーカスした展覧会を巡る旅をしています。

今回訪れたのは、松涛美術館「中央アジアの手仕事 ―華麗なる刺繍とジュエリー 広島県立美術館コレクションより―」展です。


中央アジアは情報が得にくい地域であることもあり、展覧会を見るまでどんなものが見られるか想像がつきませんでした。


また、現在の世界情勢―イランとアメリカ、イスラエルの緊張状態、仲介国パキスタンの動向―を踏まえても、この地域一帯の人々の伝統・歴史・生活・様式を日本で見られるタイミングとして、「見ておかねば」という気持ちになり、急いで足を運びました。


💬「針と糸」にフォーカスした展覧会をピックアップしています。



松涛美術館「中央アジアの手仕事」展レポート。ウズベクのスザニ刺繍、トルクメン人の花嫁衣裳など全285点を鑑賞。針と糸が紡ぐ祈りと美の世界を、広島県立美術館コレクションから読み解きます。
2026年4月11日(土)~6月14日(日)|「中央アジアの手仕事 ―華麗なる刺繍とジュエリー 広島県立美術館コレクションより―」|松涛美術館

展覧会の概要


本展は、現在のウズベキスタン、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタンの人々による華やかな手仕事の数々を一堂に鑑賞できる貴重な機会です。


出展作品はすべて広島県立美術館のコレクションで、同館は国内随一のウズベクとトルクメンの染色・ジュエリーコレクションを誇ります。

工芸品、刺繍布、ジュエリーなど全285点が展示されました。


会場は2フロア構成。

地下一階は主にウズベク人の民族衣装と刺繍二階はトルクメン人の衣装と装飾品を展示していました。


ジュエリーや装身具、帽子、靴、馬用の装身具から護符まで、銀製品の細かい作品をひとつひとつ分類しキャプションを付けて展示する労力は並大抵ではなかったはずです。


以前来たときとは全く印象の異なる会場構成で、刺繍布を上から吊るして一面を大きく使う展示は、額装された平面作品とはまた違った迫力がありました。



地下一階:ウズベク人の刺繍と護符



地下一階で特に印象に残ったのは、スザニと呼ばれる大きな刺繍布です。

かぎ編み、チェーンステッチ、コーチングステッチ、クロスステッチを駆使し、木綿の布に草花、アーモンドの実、月など自然のモチーフが刺繍されています。


人の背よりはるかに長い布いっぱいに広がる、植物の茎や葉のくるくるとした曲線と大輪の花。ペイズリー柄に似た印象もありますが、もう少しオリエンタルな趣です。


赤、オレンジ、濃い緑、赤紫、ピンク、水色の糸が黄土色の生地に縫われており、鮮やかというよりは自然に近い、影のある深みのある色合いでした。これは天然染料を使っているからこそ生まれる色彩です。イスラム教の影響で人物や動物の表現は避けられているそうで、そのぶん植物や月のモチーフに込められた祈りが伝わってきます。


また、銀製の護符「アシク」も展示されていました。ハート型をしたお守りで、衣服の背に縫い付ける「背飾り」です。見せるためではなく、背を守る護符として身に付けるもので、「アシク」とは「愛」を意味し心臓の形をしているとのこと。ハート型の由来は不明だそうです。


宗教的な背景を紐解くと、古代からゾロアスター教、マニ教、仏教、景教など多様な信仰が根付いていたことがわかります。仏教が信仰されていた時代の名残として、小さな仏像を入れる護符入れも展示されていました。


銀細工の細かい装飾品の数々は、目に見えない悪や邪視から身を守るためのお守りとして、日々の生活に寄り添うものです。



二階:トルクメン人の花嫁衣裳


二階の会場はトルクメン人の衣装と装飾品を展示しており、照明を落とした薄暗い空間に、深く濃い赤。血のような、脈打つような色合いの衣装が並んでいました。


ひときわ目を引いたのは、マネキンが纏うテケ族の花嫁衣裳です。

全身真っ赤なワンピースに、頭飾り(エブメ)、こめかみ飾り(テネチル)、首胸飾り、腕輪飾り、指輪といった装飾品が重ねられ、その総重量は5〜15キロにもなるといいます。


日本の白無垢の重さも約5〜10キロと聞くと、重さという点での共通点に驚かされます。西洋でも日本でも花嫁衣裳は「白」というイメージがありますが、この衣裳には白いものがどこにもありません。

それでも「誰かの手で作られた刺繍や文様に祈りや願いを込める」という行為の本質は、日本の色打掛――金・赤・黒をベースに吉祥文様を刺繍した―と不思議なほど重なります。


東アジアと中央アジアの偶然の一致のようで、各国の花嫁衣裳を見比べると予想外の発見があるかもしれません。


なお会場には、漫画家・森薫先生の直筆イラストが展示されていました。中央アジアを題材にした作品「乙嫁語り」の作者ならではの視点で描かれたこのイラストのおかげで、トルクメン人とウズベク人の衣装や刺繍の違いを直感的に理解することができました。「乙嫁語り」、ぜひ読んでみたいと思います。


おわりに


思った以上に見応えのある、発見に満ちた展覧会でした。針と糸を通して見える世界は、わたしが想像した以上に豊かで、そこから派生する謎や広がりを楽しんでいます。

展示会場の一室は撮影可でした。そこで撮った写真はnoteでも共有していきますので、ぜひのぞいてみてください。


中央アジアの手仕事 ―華麗なる刺繍とジュエリー 広島県立美術館コレクションより―

会期:2026年4月11日(土)~6月14日(日)

会場:松涛美術館

開館時間:10:00~18:30(金曜日は20:00まで)

入場料:1,000円


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