2026展覧会レポート#36|ティーカップ・メリーゴーラウンド@三井記念美術館
- 5月14日
- 読了時間: 7分
📍いつもブログを読んでくださりありがとうございます。
三菱一号館美術館に続いて足を運んだのは、
三井記念美術館で開催中の『特別展「ティーカップ・メリーゴーラウンド ヨーロッパ陶磁にみるモダンデザイン100年」』。
先月18日に開幕したばかりの本展は、岐阜県現代陶芸美術館のコレクションから、モダンデザインの系譜につながる西洋陶磁器を一堂に公開し、ヨーロッパ陶磁を通じてモダンデザインの100年をたどる内容です。
💬5月に見に行きたい展覧会をピックアップしています。
💬4月に訪れたい東京の展覧会でピックアップしています。
美術館そのものが、美しい
三井記念美術館を訪れるのは今回が初めてでした。
館内はレトロなランプや絨毯が敷かれた飴色に磨かれた柱など、大正モダンの趣が漂い、気品ある邸宅にお邪魔したような気分にさせてくれます。
展示を見る前から、すでに特別な時間が始まっている感覚でした。
「針と糸を巡る旅」から、陶磁器へ
個人的に、テーマを決めて美術展を巡る「針と糸を巡る旅」というシリーズがあります。
日本民藝館を訪れたことをきっかけに、刺繍やテキスタイルだけでなく、陶芸もまた手仕事のひとつとして捉えられるのではないかと感じるようになり、以来、陶磁器・漆器・陶芸の展示にもできる限りで、足を運ぶようにしています。
国ごとにティーカップやテーブルウェアの数々を比較しながら見られるという本展は、まさにそのシリーズに合っている?展示でした。
ドイツ:マイセンからバウハウスへ
展示はドイツから始まります。出品数も最も多く、マイセンのデコラティブな植物文様や神話的モチーフの華やかさから、バウハウスのミニマルな造形へ——19世紀から20世紀にかけての大きな潮流を、一連の流れとして実感できました。
フランス:セーヴルの青、そして絵画的な優雅さ
フランスのコーナーで印象的だったのは、マイセンのライバルとも言われるセーヴルの、深く濃厚な青の美しさ。またアール・ヌーヴォーとアール・デコの影響を受けたエミール・ガレやフェリックス・ブラックモンの作品には、絵画的な優雅さが漂っていました。
北欧:すっきりと淡く、静かな美しさ
各国の中で特に興味深く見たのが北欧の陶磁器です。
デンマーク・スウェーデン・フィンランドの3国が出品しており、これまでスウェーデン絵画展や北欧テキスタイル展を辿ってきた流れで、陶磁器にも北欧らしさを感じたいと思っていました。期待通り、すっきりしたシンプルなデザインと淡い色合いが印象的。
デンマークはロイヤル・コペンハーゲン、フィンランドはアラビアが選ばれていましたが、他のブランドやデザインも見てみたかったという好奇心も湧きました。
旧ソビエト連邦で幕を閉じる
展示はドイツから始まり、旧ソビエト連邦で締めくくられます。
各国の美意識や色彩、フォルムを比較しながら巡ることで、ヨーロッパという地域のデザインの多様さと共通点が浮かび上がってきます。
ガラスケースの前で、気分がしんと静まる
ガラスケースの中に並ぶカップ&ソーサー、ティーポットの数々。
どれも小さく精巧に作られた装飾品です。丁寧に仕上げた一点一点を眺めていると、自然と気分が静まります。そして可愛らしいものに出会うたびに、心が少し明るくなります。
なお、三菱一号館美術館の小企画展「ジャポニズムの季節 I—春」でも、ガラスケースに収められたテーブルウェアが展示されていました。
同じモチーフでも見せ方が異なり、それぞれの魅力を引き出す工夫が光っていました。
工場と手仕事、想像の広がり
陶芸が一人の作り手が最初から最後まで仕上げるものであるのに対し、陶磁器は大きな工場で製造されます。厳密には手仕事とは異なりますが、各国の美意識や生活様式に合わせた意匠には、確かにその土地と人々の気配が宿っています。
もしここに日本やアジア諸国の陶磁器も並んでいたら、どんな流れが見えてくるだろう。
そんな想像を巡らせながら、展示室を後にしました。
【特別展「ティーカップ・メリーゴーラウンド ヨーロッパ陶磁にみるモダンデザイン100年」】
会期:2026年4月18日(土)〜6月21日(日)
会場:三井記念美術館
開館時間:10:00~17:00(入館は16:30まで)
入場料:1,500円
🪞展覧会の概要、趣旨・展示構成(国別)
♦展覧会の概要、趣旨
岐阜県現代陶芸美術館のコレクションより、モダンデザインの系譜につながる西洋陶磁器を一堂に公開。19世紀半ばから約100年間に焦点を当て、ドイツのマイセン、フランスのセーヴル、イギリスのミントン、デンマークのロイヤル・コペンハーゲン、フィンランドのアラビアなどのティー・ウェアやコーヒー・ウェアを中心に、室内装飾品などを加えた名品を紹介する。
マイセンやセーヴルといった伝統ある名窯の格調高い表現はもちろん、アール・ヌーヴォーのうねるようなフォルム、さらにはロシア・アヴァンギャルドの実験的な造形など、陶磁器という枠組みを超えた芸術性の高さも注目ポイント。王侯貴族のための贅を尽くした名品から、産業革命を経て市民の生活に寄り添うようになった機能的な器まで、それぞれの国や時代の背景を映し出した作品が展示される。
出品総数は128点。展示はすべて撮影可能。
♦展示構成(国別)
出品作品はすべて岐阜県現代陶芸美術館蔵。「小早川コレクション」は小早川春信氏より同館に寄贈されたマイセンを中心とする約100点のコレクション。
🇩🇪 ドイツ(No.1〜60)
最大のセクションで、以下の窯元・工房が出品されている。
マイセン(est.1710):ポプリ壺「科学」、花飾ティーセット、「クロッカス・パターン」コーヒーセット、「クローバー・パターン」ティーセット(テオドール・グルースト)、リヒャルト・リーマーシュミット、アンリ・ヴァン・ド・ヴェルドらによる植物文・透かし彫り皿など(No.1〜29)
ニュンフェンブルク(est.1747):花文・スグリ文・白鳥文などカップ&ソーサー(No.30〜35)
KPMベルリン(est.1763):植物文・水仙文・クローバー文カップ&ソーサー、エジプト女性像センターピースなど(No.36〜49)
ローゼンタール(est.1879):シクラメン文、女性像付フロアランプ(1924年)など(No.51〜56)
バウハウス陶器工房(est.1920):オットー・リンディッヒ設計のココアポット(1924年)(No.59)
🇫🇷 フランス(No.61〜75)
セーヴル(est.1756):ティーセット「クラウデッド・ブルー」(1876年)、踊り子像(アガトン・レオナール、1901年)、沼田一雅デザインの鴨像(1921年)など(No.61〜69)
テオドール・デック、フェリックス・ブラックモン(大皿・コンポートなど)(No.70〜73)
エミール・ガレ:人物文コーヒーセット(1880〜84年)、果実に蜻蛉文皿(No.74〜75)
🇬🇧 イギリス(No.76〜97)
ロイヤル・ウースター、ウエッジウッド、ミントン、ロイヤル・ドルトン、ムーアクロフト、スージー・クーパーの茶器を中心とした品々が紹介される。特にミントンではクリストファー・ドレッサーによる幾何学文・植物文・点文カップ&ソーサー(1867〜1871年)が多数出品。ロイヤル・ドルトンからは狐文コーヒーセット(1950年代)、線文ティーセット「タンゴ」(1935〜37年)なども並ぶ。
🇮🇹 イタリア(No.98)
ジノリ(est.1735):ジオ・ポンティによる馬の競技文コーヒーセット(1932〜38年)。
🇳🇱 オランダ(No.99〜106)
アール・ヌーヴォーが花開いた19世紀末創業のローゼンブルフとブランチェが紹介される。ローゼンブルフのうねるような独特のフォルムに軽やかな色彩で花々を描いたエッグ・シェル(卵の殻のように薄い磁器)の器は、1900年のパリ万国博覧会で評判を呼んだ。
🇩🇰 デンマーク(No.107〜111)
ロイヤル・コペンハーゲン:アーノルド・クロー設計の「マーガレット・サーヴィス」ティーセット(1899〜1922年)、北極熊付トレイ(1925年)など。ビング・オー・グレンダール:鷺文食器揃(No.111)。
🇸🇪 スウェーデン(No.112)
ロールストランド(est.1726):アルフ・ヴァランデー設計のトンボ文カップ&ソーサー(20世紀初頭)。
🇦🇹 オーストリア(No.113〜115)
ミヒャエル・ポヴォルニーのプット付センターピース(1910年頃)、ユッタ・ジカ(ウィーン工房系)によるティーポット・カップ&ソーサー(1901〜02年)。
🇫🇮 フィンランド(No.116〜125)
アラビア(est.1873):1930〜40年代の各種食器(「ファッサーニ」「エグプティ」など)、カイ・フランク設計の食器揃「キルタ」(デザイン1948年)、ビルゲル・カイピアイネン設計の「パラティッシ」(デザイン1969年)など。
🇷🇺 旧ソヴィエト連邦(No.126〜128)
カジミール・マレーヴィチによるティーセット(1962年再製作、オリジナル1923年)、ニコライ・スエーティンによる幾何学文ティーポット(1923年)、イリーナ・ロジェストヴェンスカヤによる幾何学文カップ&ソーサー(1930年代)。ロシア・アヴァンギャルドを代表する作品群。
あわせてどうぞ
詳しい活動はこちらから→【プロフィール】
お仕事のご相談はこちらから→【お問合せ】





コメント