2026展覧会レポート#04|LOVE いとおしい...っ! ―鏑木清方の恋もよう、奥村土牛のどうぶつ愛―
- 1月16日
- 読了時間: 4分
更新日:1月29日
📍いつもブログを読んでくれてありがとうございます。
某日、恵比寿にある山種美術館を訪れました。
恵比寿駅から徒歩15分ほど。
日本で初めての「日本画専門」の私設美術館として知られる場所です。
恵比寿という土地柄、駅周辺には海外の方も多く、美術館の展示室にも外国人の鑑賞者が見られました。
日本画というローカルな表現が、静かに国境を越えている──その光景自体が印象的でした。

展覧会のテーマは「Love」
今回の展示タイトルは、
「Love いとおし…っ!―鏑木清方の恋模様、奥村土牛のどうぶつ愛―」
主旨はとても明快です。それは、「さまざまな“愛”のかたちを作品から感じてください」ということ。
恋人
親子
夫婦
家族
故郷
動物
そして“推し”への想い
人が誰かを、あるいは何かを想うときに生まれる、多彩な愛のかたちが日本画の中に静かに描かれていました。
冬という季節――クリスマス、正月、バレンタインと、「大切な人」と向き合う機会が増える時期に合わせた開催でもあります。
年齢が書かれたキャプション
この展覧会で特にユニークだったのが、すべての作品に「制作当時の作者の年齢」が書かれていたことです。
たとえば鏑木清方の《佳日》には、
82歳
という数字が添えられていました。
年齢があるだけで、作品の見え方は変わります。
この年齢で、こんなまなざしを持っていたのか
この若さで、ここまで描けたのか
作品と同時に、作家の人生の時間が立ち上がってくるのです。
観劇が、絵を深くする
第1章「人々への愛」で注目したのは池田輝方《お夏狂乱》。
キャプションには、池田の言葉が引用されていました。
「絵は女の人の顔や姿が上手く描けるだけでは良い絵とは言えない。通人となる最も捷径は観劇であろうと思う。」
観劇――つまり芝居を見ること。
役者の動き、身振り、衣装、緊張感、高揚感。
それを生身で体験することが、絵の線や色を育てるという考え方です。
これは現代の作家にとっても、極めて示唆的な言葉だと感じました。
《薄雪》と《桃花》――青春と結晶度
チラシのメインビジュアルにもなっている鏑木清方《薄雪》(39歳作)は、やはり圧巻でした。
近松の浄瑠璃に由来するこの題名は、「やがて消えゆく青春の二人の運命」を象徴しています。
縦長の絹本に描かれたその姿は、線も色も驚くほど繊細で、物語の中へと観る者を深く引き込んでいきます。
同じ章で心を奪われたのが、速水御舟《桃花》(29歳作)。
娘の誕生を祝って描かれたこの掛軸には、
「結晶度の高い掛け軸」
という言葉が添えられていました。
小さな画面の中に、まさに結晶した時間と感情が凝縮されているようでした。
動物たちが放つ、まっすぐな愛
第2章には、動物を描いた作品も多く並びます。
犬、猫、猿、兎、山羊、鹿、みみずく、孔雀、鴨の親子……。
そこにあるのは、人間関係の複雑さとは違う、ただ「かわいい」「愛おしい」と感じるまっすぐな感情でした。
それが、この章の空気を軽やかにしていました。
美術館にも宿る「Love」
山種美術館では、鑑賞者へのささやかな心遣いもありました。
私が鉛筆でメモを取っているのを見て、学芸員の方がクリップボードを差し出してくださったのです。
「よろしければ、こちらをお使いになりますか。」
小さな行為ですが、そこにも確かに「Love」がありました。
静かに、心に残る展覧会
前回訪れた東京都写真美術館「遠い窓」展と同様に、この展覧会もまた、身近なもの、親しい存在、大切な人や動物を静かに見つめ、声高に叫ぶことなく、共に生きる時間を尊ぶ態度で貫かれていました。
「愛」とは、主張ではなく、観察と感謝の積み重ねなのかもしれません。
この展覧会は2026年2月15日まで開催されています。
冬の恵比寿で、少し足をのばして訪れる価値のある展示でした。
2025年12月6日(土)~2026年2月15日(日)
山種美術館
開館時間10:00ー17:00
観覧料:一般1,400円
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