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2026展覧会レポート#21|Tokyo Contemporary Art Award 2024–2026 受賞記念展「湿地」

  • 3月23日
  • 読了時間: 4分

更新日:3月31日

📍いつもブログを読んでくださりありがとうございます。


照明が落とされた会場に入ると、白い壁も整然とした額縁もありませんでした。

建築現場に足を踏み入れたかのような、未完成の状態を示す足場。

鉄のパイプを頼りに渡る杉の木の通路。

会場スタッフには、足場ルートでの撮影は禁止と告げられました。


むき出しのコード、絡まるケーブル、金網に置かれた水の入った球体の中の豆電球、使い古されたブリキのバケツ、錆びたバケツ——そしてどこからともなく漏れてくる、水が滴る音。


足場の下から上を覗く体験など、したことがありません。

建築現場の工事風景に一般人は立ち入り禁止だからです。そこから見えるものなど、想像することもありませんでした。それがすべて梅田哲也の作品であることを知りながらも、思わず立ち止まりました。



東京都現代美術館で開催中のTokyo Contemporary Art Award 2024–2026受賞記念展「湿地」レポート。梅田哲也と呉夏枝による共鳴するインスタレーション——足場、水音、手織りの布、断片的な語り部の声。内部と外部の境目が溶け合う空間体験を綴ります。
2025年12月25日(木) - 3月29日(日)|Tokyo Contemporary Art Award 2024–2026 受賞記念展「湿地」|東京都現代美術館

ソル・ルウィット展のチケットで企画展を二つ見ることができました。

その一つ、Tokyo Contemporary Art Award 2024–2026受賞記念展「湿地」を廻りました。


受賞者は梅田哲也と呉夏枝です。


呉は今年1月、東京都写真美術館「総合開館30周年記念 日本の新進作家 vol.22 遠い窓へ」展の受賞者でもあり、作品を見るのは今回が二度目です。


湿地と聞いて思い浮かべるのは、泥と水が混じり合ってぬかるんだ土地です。足が沈み、身体が不安定になる場所。梅田と呉は近年、「海路」や「水路」など水にまつわる考察を作品の重要な要素として取り入れています。水と陸地の境目である湿地のように、二人の作品は時に反転しながら、緩やかに重なります。


会場全体は「裏表の関係のように、内部と外部の境目を可視化する空間」となっていました。二人はお互いの作品を独立して見せるのではなく、補い合うように制作したといいます。それはコラボというよりも、互いの作品が「湿地」という場で共鳴しているようでした。

呉の作品が時間の堆積なら、梅田の足場やガラスの球体は、物事の構造を可視化するもの——時間の流れそのものです。



東京都現代美術館で開催中のTokyo Contemporary Art Award 2024–2026受賞記念展「湿地」レポート。梅田哲也と呉夏枝による共鳴するインスタレーション——足場、水音、手織りの布、断片的な語り部の声。内部と外部の境目が溶け合う空間体験を綴ります。
梅田哲也と呉夏枝による共鳴するインスタレーション—足場、水音、手織りの布、断片的な語り部の声。内部と外部の境目が溶け合います。

呉の作品は、自作の織物と糸が会場全体に蜘蛛の巣のように張り巡らされ、地図や製図の実線で結ばれた空間の中を、鑑賞者が三次元的に動き回ります。

呉は糸を紡ぎ、機で織り、布を染めます。その一本一本に、国と国の歴史、人と人の記憶が文字通り織り込まれています。スピードと効率が支配する現代において、呉の手仕事は抵抗として静かに機能しています。


機織り機も、自分の身体に巻き付けるようにして織る方法で作られているといいます。素材が直接、自分の身体の一部を通過して作られる。一本の糸が、決して絡まらないように束ねられている丁寧さに、作者が紡いだ痕跡を無駄にしない配慮が示されていました。サイアノタイプの青い布の中を進むと、像の曖昧さからタイムスリップしたように感じます。


梅田の作品は、わたしたちが普段なら足を踏み入れることができない場所へのルートや動線を作品にしています。会場が建つ前の更地の状態に戻し(一回ゼロに立ち戻る)、そこから出来上がる過程で意図せずに隠されたもの、または隠れてしまったものを可視化します。


それは真実を暴くという手法ではなく、一回限りのインスタレーションによって気付かせるものです。

会場を出たあと、自分の身の回りの建築や住居に対して、見えていないものを透視図的に見るよう視点を促しているのではないでしょうか。——それはつまり、普段わたしたちが何を見ないようにしているかという問いでもあります。


建築の裏側、都市の構造、そして歴史。


呉の作品が扱う「国と国の歴史」と、梅田の「隠れているもの」は、ここで深く関わり合います。


会場を意図的に真っ暗にして物事の多面的な側面を見せたり、自然光を導いたりしながら、本来の姿ではないものが現れる可能性を示します。

わたしたちはその中を不安定に歩き回り、耳からも情報を受け取ります。

呉作品を鑑賞する際、イヤホンを受け取ることができます。イヤホンからは、島での生活を語る声が流れてきました。

構造の時間的・空間的内部へと進むことを、この展覧会は静かに促していました。


会場を出ると、美術館そのものが、裏返しのように感じました。


Tokyo Contemporary Art Award 2024–2026 受賞記念展「湿地」

会期:2025年12月25日(木) - 3月29日(日)

会場:東京都現代美術館

開館時間:10:00 - 18:00

入場料:無料



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