旨味・深み・面白味が増す|原田ひ香『あさ酒』を読んで
- 23 時間前
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『ランチ酒』シリーズが3作続いたあと、その世界を引き継ぐようにして登場したのが『あさ酒』です。
『ランチ酒』『ランチ酒 おかわり日和』『ランチ酒 今日もまんぷく』に続くシリーズ第4作であり、新しい主人公による「新章」ともいえる一冊です。
📚眩しいシリーズの始まり。
『あさ酒』
著者:原田ひ香
出版年:2024年
出版社:祥伝社
主人公は26歳の水沢恵麻。コロナ禍で派遣の仕事を失い、恋人から婚約破棄された女性です。恋人と暮らしていた家も出ることになった恵麻に手を差し伸べたのが、前作までの主人公・犬森祥子。恵麻は祥子から「見守り屋」の仕事を紹介され、便利屋「中野お助け本舗」で見習いとして働き始めます。
本作も仕事が終わる朝方に、お酒に合う料理が次々と登場します。インドカレー、餃子、生ハム、ソルロンタン、チーズバーガー、焼きそば、オムライス、蕎麦。登場する料理とお酒の組み合わせは、ガッツリ丼メニューかと思えばそうでもないのは、主人公に合わせたからか。その彼女の視点から「見守り屋」という仕事や、犬森祥子という女性を描いています。
同じ仕事なのに主人公が変わると、こうも見え方が変わるのかという新鮮味と、シリーズが続く中で原田ひ香さんの筆もピントが合い、グッと旨味・深み・面白味が増しています。
前作と違うのは、恵麻が暮らすシェアハウスの住人たちが物語に加わったことです。
シェアハウスの住人もまた、リアルタイムに生きるわたしたちの誰かを反映しているような、寂しさや悩みを抱えています。一人として同じ人物が登場しないように、ひとつとして同じ経験、境遇はありません。しかし、抱える悩みや問題や心情に、読者は好奇心を持ち、自分と似た部分を発見します。そして初めて知る他者の事情に驚きます。
設定が昼から朝に変わったことで、読後感に清々しさや爽やかな気分になりました。
一日の始まり、真っ新な時間帯に、恵麻がそれまでの日々をリセットし再スタートを切ります。
『あさ酒』というタイトルが、恵麻のこれからを表しているように感じました。
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