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レシピをいただく|原田ひ香『定食屋「雑」』、『口福のレシピ』を読んで

  • 6 日前
  • 読了時間: 4分

📍いつもブログを読んでくださりありがとうございます。


原田ひ香作品を読んできて、共通する主人公像があります。シングルマザー、結婚を破棄された女性、未婚で結婚に踏み切れない女性——男性の視点から描かれたものではなく、そもそも男性が主人公の物語はまだ読んだことがありません。


何らかの理由で結婚生活を継続するのが困難な女性が、どう生きていくか。働いてお金を稼ぎながらどう増やし、どう貯めていくか。何に使うかー美味しいものを食べ、美味しいお酒を飲むこと。それを「食」を通じて描く——それが原田ひ香の一貫した姿勢です。今回もそんな2冊を読みました。



📚新しいわたしたちの関係。

『定食屋「雑」』

著者:原田ひ香

出版年:2024年

出版社:双葉社


原田ひ香の「食べることとお金」「仕事と生きること」を描くシリーズ。

「三人屋」「ランチ酒」「あさ酒」「図書館のお夜食」を読んできましたが、本作もその流れにある一冊です。


主人公・三上沙也加は夫と二人で暮らしていました。ある日、夫から「離婚してくれないか」と言われ、家を出て行かれてしまいます。夫が通っていたという定食屋「雑」に何か手がかりがあるのではないかと、その店を訪れます。70代の女性、「ぞうさん」と呼ばれる店主が一人で切り盛りしていました。メニューはどれも頼んでもすき焼きのような甘辛くて濃い味付けです。


沙也加はその店が気になり通ううちに、週3日アルバイトをすることにします。最初は皿洗いや給仕でしたが、次第にぞうさんから調理を教わり、下ごしらえや新しいレシピを一緒に考える間柄になっていきます。そこにコロナ禍が襲います。


離婚の危機、密かに恋した人との死別——二人の女性に降りかかった異性との関係は、甘いものではありませんでした。しかし定食屋という場所がある。知り合いでも身内でも友人でもない二人の女性が、コロナ禍という未曾有の経験を経て一人で生きていかなければならなくなったとき、エンパワーメントとでも、シスターフッドとでも呼べるような関係で前へ進む物語です。


これから先は年齢・環境・背景に共通点があろうとなかろうと、それが相性の条件になるのではなく、一人で抱え込まないことが鍵になるのではないか——読み終えてそう思いました。


📚家庭料理ー今日はなに作ろう。

『口福のレシピ』

著者:原田ひ香

出版年:2020年

出版社:小学館


原田作品に登場する女性はよく食べ、よく飲み、よく作る。仕事もしっかりこなし、金銭感覚も堅実で、安くて美味しいものを好む——そういう人物像が繰り返し描かれます。

本作はその中でも「作る」ことにフォーカスした一冊です。


現代のわたしたちがSNSで時短レシピや少ない食材で作れるレシピを検索するように、時代の流れによって人の食生活と口に入れるものは日々変化しています。それは本当に一日たりとも同じではない。その変化を料理家は素早く察知し、ニーズを掴んでレシピを起こします。レシピには著作権がなく、人類が共有する財産となります。だから大切に受け継がれることもあれば、使い捨てにされることもある。


主人公・品川留希子は江戸時代から続く料理学校「品川料理学園」の家に生まれた女性です。大学では親の希望もあって栄養学を学び、卒業後は製品開発会社にSEとして就職します。しかし家業を継ぐことを当然視される環境への反発から、料理学校とは距離を置いています。


自分ではどうすることもできない出生や家柄に対して、「料理」と「レシピ」を真ん中に据えながら、自身の思い込みや祖母・母との関係を少しずつ解きほぐしていきます。

「ポークジンジャー」(豚の生姜焼き)のレシピをめぐり祖母と母と対立した留希子は、そのレシピに隠された一人の女性の想いを時代を越えて受け取ります。顔も存在も伏せられていた昔日の女性の声が、肉筆で書かれたレシピから立ち上がってくる。

一人の人間が生きた証拠のようでした。


今晩、手早く作っている料理と呼べるかどうかもわからないような夕食と、もっと手の込んだものを作りたいという気持ち——どちらも思い出してしまう小説でした。



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