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本能と欲が発動する。|千早 茜『こりずにわるい食べもの』、『胃が合うふたり』を読んで

10月13日
読了時間: 4分

📍いつもブログを読んでくださりありがとうございます。


わたしは映画でも映像でも、食べている人を見るとなぜかうるっとしてしまいます。


人が誰かと一緒に食事をしている姿は、ふたりの関係が言葉で名付けられるような関係でも、そうでなくても——美味しそうな顔をして、ほくほくした顔をして、満たされた顔をしているのを見るのが好きなのです。

そして読むことも好きんだ、と気づくのです。


千早茜さんの「わるたべ」シリーズとエッセイを2冊ご紹介します。


💬千早茜さんの読書レポートはコチラからどうぞ。



📚パフェと山形と友人。

『こりずにわるい食べもの』

著者:千早 茜

出版年:2022年

出版社:新潮社


移動中の電車の中でこの本を読んでいたら、たまらず降りた駅で棒アイスを買ってしまいました。その場で歩きながら、あるいは公園のベンチで食べたかった。しかし著者だったら、家に帰って丁寧に袋を開けて、じっくりと美味しさに舌鼓を打ち、至福の時間にするだろう。すると、ここでは食べられないと——羞恥心もありながら——家に向かって歩いたのでした。


本作は千早茜のエッセイ第3弾です。現在の最新刊は2026年5月に発売された『なみまの わるい食べもの』で、「わるたべ」シリーズとして続いています。


千早作品を何冊か読んできて、「これは…」と思うエピソードが小説に書かれていることに気づいていました。「メモ魔」を自称する千早の、日常で見たこと、知ったこと、感じたことが、小説の世界に息を吹き返している。本作を読んでその確信が深まりました。


ブラックランチブックス、布団のスープ、中華街の粉仕事、包んで包んで兵馬俑——装画・挿画は北澤平祐。そこにあるだけで可愛くておしゃれな表紙と挿画も楽しく、読んでいて楽しい一冊です。


とくに本書にはパフェと山形の美味しいもの(千早の大好きな餅がたくさん出てくる)が書かれています。その二つに縁のある友人にこの本をプレゼントしたい。

次に会うとき、バッグに忍ばせてサプライズで渡そうと思っています。



📚同日、同時刻に一緒に食べたもの。

『胃が合うふたり』

著者:千早 茜

出版年:2021年

出版社:新潮社


千早茜と新井見枝香。書店員、踊り子、エッセイストの三足のわらじを履く新井と、千早が雑誌「yom yom」で連載したエッセイをまとめた一冊です。ふたりが同日、同時刻に一緒に食べたものについて、新井が先に書き、それを受けるかたちで千早が書くという構成です。


食の好みが合い、食べる量もほぼ同じ。食べているときはお互いの存在が消えてしまうくらい没入してしまうところも似ている。いい塩梅に干渉せず、深入りせず、依存しない関係——友人といえばそうだけれど、読んでいると「親しい他人」という感じが濃くなりました。それはなぜだろう。胃が共鳴し、ふたりの距離は縮んだり延びたりする。そういう、直観のように見逃せない部分に気づいてしまうのも、食べるときの本能と欲が発動されるからでしょうか。


食べたものを緻密にメモを取る千早と、その時の気分や身体に合わせて動く予想のつかなさが魅力の新井。食べているときは神経を全集中する食事もあれば、大量のお菓子やパンを買い込んで夜が明けるまでお喋りに花を咲かせることもある。


パフェ、ぜんざいやあんみつ、餃子や鍋一杯の豚汁、天丼、鴨南蛮、花茶や普洱茶、メロンジュース、ガルビュール、マッターホーンのクッキー、生湯葉かけ丼——読んでいるだけでお腹が空いてくる。


人が誰かと一緒に食事をしている姿は、ふたりの関係が言葉で名付けられるような関係でも、そうでなくても——美味しそうな顔をして、ほくほくした顔をして、満たされた顔をしているのを読むことも好きなのです。



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