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2026展覧会レポート#53|密やかな美 小村雪岱のすべて@埼玉県立近代美術館

  • 8 時間前
  • 読了時間: 6分

📍いつもブログを読んでくださりありがとうございます。


2025年にあべのハルカス美術館を皮切りに、千葉市美術館を経て、いよいよ埼玉にやってきた「小村雪岱(こむら せったい)」展を見に行ってきました。


本展は前期・後期で約200点の大規模な展示替えを行いながら、雪岱の約25年間の画業を過去最大規模で紹介する回顧展です。前期は7月11日から8月16日までの約5週間で、装幀・日本画・舞台美術という雪岱の原点をたどる内容になっていました。


💬「小村雪岱」展の見どころをまとめました。



埼玉県立近代美術館で開催中の「密やかな美 小村雪岱のすべて」展のレポート。装幀・日本画・舞台美術など多彩な仕事を残した画家・小村雪岱の魅力と、鑑賞のコツを実際の観覧記とともに紹介します。
7月11日(土)― 9月23日(水・祝)|「密やかな美 小村雪岱のすべて」|埼玉県立近代美術館

小村雪岱とは


小村雪岱は1887年(明治20)に埼玉県川越に生まれ、1940年(昭和15)に53歳で没した、大正から昭和初期にかけて活動した画家です。16歳で日本画家・荒木寛畝に入門したのち東京美術学校日本画科(選科)へ進み、在学中は下村観山の教室で学びました。そしてこの時期、1907年に泉鏡花と運命的な出会いを果たします。


装幀家としては1914年、泉鏡花の『日本橋』でデビューし、以後は鏑木清方とともに鏡花の装幀・挿絵を担っていきました。1918年から1923年にかけては、資生堂初代社長・福原信三が自ら主導して立ち上げた資生堂意匠部にも在籍し、今も同社で使われている「資生堂書体」の基礎をつくった一人としても知られています。


挿絵、装幀、日本画、歌舞伎「一本刀土俵入」などの舞台装置、さらには映画の美術考証まで、ジャンルを横断して活躍したのが雪岱の大きな特徴です。


今回の展示は、雪岱が泉鏡花や邦枝完二といった小説家、鏑木清方・松岡映丘といった日本画家、六代目尾上菊五郎ら名優、そして福原信三のような版元・企業人など、多くの文化人とどのように交流し、作品を生み出してきたかという「人とのつながり」に焦点を当てているのも見どころのひとつです。



第一会場:装幀・挿絵の原点


第一会場にはさっそく、今回のメインビジュアルとなった《青柳》《落ち葉》《雪の朝》(すべて埼玉県立近代美術館所蔵)の3点が並びます。額装の状態での展示でした。


掛け軸だと思っていたので、額に入った比較的小さいサイズの作品は絹本着彩でした。拡大されたチラシからも、誰もいないのに人の気配が残る楽器(三味線と鼓)だけがぽつんと置かれた畳の広さと、涼し気にしたたる柳の描写が、「密やかな美」という展覧会タイトルとリンクしていました。


前期の会場全体は、装丁本や新聞連載小説の挿絵(印刷されたもの)とその原画が資料として非常に多く、墨で描かれた原画の線の繊細さと、これ以上はないというくらいミニマルな画面が心地よく、清明さを感じました。



舞台美術の仕事


舞台芸術の仕事は歌舞伎などの背景を手がけたものです。ヨコに長いサイズの絹に舞台の背景となる情景や風景を、小さな作品として描いていました。このようなサイズの舞台背景画を見たことがなかったので、ミニチュアのようで興味深いものでした。これらの作品は主に前期にまとまって展示されているので、ご興味のある方はぜひ前期のうちに足を運んでみてください。



肉筆画に込められた形式美


装丁・挿画で多忙を極めた雪岱でしたが、肉筆画も手がけています。公の場で発表されることは少なく、私的な注文を受けて描かれたものでした。

雪岱の女性像は定型的な表情や姿をし、形式美を追求したそうです。我を表に出さず型に込めることで、見る者がそれぞれの心情を投影できる余地が生まれる。それは作品と同様に、雪岱が同時代の作家や大衆から評価された理由のひとつかもしれません。



ちょこっと鑑賞のコツ

作品リストは紙で持ち歩くのがおすすめ


今回会場を回ってみて、作品リストは紙で持っていたほうがいいと感じました。

総出品数は約650点超(前後期あわせて)にのぼり、前期・後期で作品が分かれているだけでなく、通期で展示される資料や、特定の期間だけ展示される作品もあります。


中には《「江戸役者」挿絵原画画帖》のように、ページをめくりながら見せるため2週間ごとに頁替えが行われる作品もあり、細かい設定があります。

作品数も多いため、うっかり見過ごしてしまう可能性が高いです。

あらかじめ作品リストをコピーして会場を回るのがよいと思いました。


後期は8月18日から9月23日です。

挿絵画家としての代表作が揃うそうなので、前期とはまた違った雪岱の一面が見られるでしょう。



リピーター割りあります


会期中2回目以降の観覧にはリピーター割引(一般・大高生券が2割引)もあるので、前期・後期両方をじっくり見たい方は半券を保管しておくのがおすすめです。

ミュージアムショップでは展覧会図録購入特典のほか、ハンカチやクリアファイル、マスキングテープ、菓子類などのオリジナルグッズも販売されているので、あわせてチェックしてみてください。


会期:7月11日(土)― 9月23日(水・祝)※月曜休館

  • 前期|7月11日(土)-8月16日(日)

  • 後期|8月18日(火)-9月23日(水・祝)

会場:埼玉県立近代美術館

開館時間:10:00-17:30

入場料:一般 1,400円



🪞会場構成と主な出品リスト


会場構成(全10パート・編年体)

  • プロローグ|密やかな美:《青柳》《落葉》など、雪岱様式を象徴する代表作で幕開け

  • 第I章|「小村雪岱」の誕生まで:画家になるまでの前史

  • 第II章|泉鏡花『日本橋』―装幀の始まりと開花:装幀家デビューの原点

  • 第III章|意匠家のまなざし―古典からモダンまで:雑誌・商業デザインなど図案家としての仕事

  • 第IV章|挑戦と模索の時代:1926〜1931年:活動が多分野に広がっていく時期

  • 第V章|「九九九会」の集いから:鏡花を慕う文化人グループとの交遊

  • 第VI章|挿絵の真骨頂―粋と艶の美学:「おせん」「お傳地獄」など挿絵画家としての代表作

  • 第VII章|世の需めに応えて―円熟期の装幀・舞台装置・肉筆:舞台装置や肉筆画も含む円熟期の仕事

  • 第VIII章|別れの時:1939〜1940年:晩年、映画美術も含む最後の仕事

  • エピローグ|没後の顕彰:戦後の再評価の歩み


雪岱の生涯をほぼ時系列でたどりつつ、装幀・挿絵・舞台美術・日本画という複数の顔が並行して展開していく構成。


出品作リスト(要点)

  • 総出品数は約650〜700点(前期・後期でおよそ200点ずつ入れ替え)


  • 埼玉県立近代美術館の所蔵品を核に、泉鏡花記念館、東京国立近代美術館、川越市立美術館、慶應義塾図書館、東京藝術大学、奈良国立博物館などから集結


  • 個人蔵の出品も多く、なかでも近年所在が判明した「山海評判記」「江戸役者」挿絵原画は、所蔵館以外では初出品


  • 松岡映丘とその門下による合作《十二ヶ月図連幅》《草枕絵巻》、鈴木春信・初代歌川国貞の浮世絵など、雪岱に影響を与えた作品もあわせて展示


前期・後期の見どころ


前期は装幀家・日本画家・舞台美術家としての原点となる仕事が中心となり、後期は「おせん」「お傳地獄」など挿絵画家としての代表作が出そろいます。


※詳細な出品作品一覧は埼玉県立近代美術館の公式サイトでPDF公開しています。




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