2026展覧会レポート#08|TSUGU つぐ minä perhonen①前編「つぐ」とは何か
- 2月6日
- 読了時間: 5分
更新日:2月9日
📍いつもブログを読んでくださりありがとうございます。
某日、世田谷美術館で開催されていた
「TSUGU つぐ ミナ ペルホネン」展を訪れました。
この展覧会については、二回に分けて書く予定です。
どうぞお付き合いください。
💬2月に関心のある展覧会をピックアップ

こちらはとても人気のある展覧会で、私が行ったのは閉館約2時間前でしたが、チケット売り場にはすでに列ができていました。
会場に入ると、目に入ってきたのは人、人、人。
ブランドとしての認知度の高さと、この展覧会に寄せられている期待の大きさを、
まずその光景から実感しました。
来場者の年齢層も幅広く、家族連れ、若い世代の夫婦や友人同士、女性だけでなく男性の姿も多く見られました。
老若男女、それぞれの立場でこのブランドに触れてきた人たちが集まっている印象でした。
「TSUGU(つぐ)」という言葉から広がるもの
この展覧会タイトルにある「つぐ」という言葉は、とても印象的です。
「TSUGU=つぐ」という短い言葉から、皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。
漢字を当てはめると、「継ぐ」「接ぐ」「注ぐ」「告ぐ」「次ぐ」など、
ひとつの言葉からさまざまな意味が立ち上がってきます。
展覧会の中では、
人と人、人ともの、時代と世代。
それらがつながるときに起こる現象として、「つぐ」という行為が提示されていました。
ミナ・ペルホネンの制作の出発点にある思想や空想、その最初の一滴のようなものが、
この言葉に凝縮されているように感じられます。

テキスタイルを中心にした展示構成
会場で印象的だったのは、完成された洋服や小物の展示が最小限に抑えられ、
テキスタイルそのものに強くフォーカスしていた点です。
天井から一枚の布として吊るされたテキスタイル。
そのデザインが生まれるまでのアイディアソースや、デザイン画や画材のひとつひとつ。
デザイナー皆川氏の再現されたアトリエ。
工場で機械が稼働する様子。
職人、そこで働く人々を映した映像。
そしてミナ・ペルホネンに関わる大切な人たちのインタビュー。
完成品ではなく、「そこに至るまでの過程」を見せる構成が、会場全体を貫いていました。

プロセスを見せるということ
こうした展示のあり方は、私には「プロセスエコノミー」という手法として映りました。
私たちが普段、洋服を着たり、購入したりする際には、なかなか目にすることのない工程。
工場で布がつくられる様子を映像として提示することで、消費の背後にある時間や労力が、静かに可視化されていました。
機械と人、機械的なものと人間の手仕事。
どの程度まで機械化を進めるのか。
人の手による揺らぎやぶれ、わずかな不均衡を、どこまで機械に委ね、どこで人の手に残すのか。
そのバランスを保つための選択が、テキスタイルというかたちで現れ、
それを身にまとうことで、私たちはその物語を共有しているのだという感覚がありました。
💬プロセスエコノミーってなあに?
ミナ・ペルホネンという名前に込められた意味
会場では、ブランド名についての説明もなされていました。
「minä」はフィンランド語で「私」という意味です。
服をつくるのも一人の私、服を着るのも一人の私。私らしさや自由を感じながら、自分らしく過ごすための特別な日常服。
その思想が、この名前には込められています。
2003年には「perhonen」が加えられました。
こちらもフィンランド語で「蝶」を意味します。
インテリアや暮らしへと活動の領域を広げ、羽ばたいていく存在でありたい。
ミナの服を選び、身にまとうことで、私自身もまた蝶のように羽ばたく存在になる。
そんな意味が、このブランド名には重ねられていました。
巡回展というかたちで「つぐ」こと
この展覧会は、今後約3年をかけて全国を巡回します。
ミナ・ペルホネン代表の田中景子さんは語っています。
長い時間をかけて巡回することで、理念や思想、ストーリーに触れる機会を、より多くの人へと「ついでいく」。
遠方にいる人にとっても、自分の行動範囲の中で展示に出会える可能性が広がります。
それは、服飾やものづくりの世界が抱える問題に目を向ける、ひとつのきっかけにもなり得るのではないかと感じました。
見応えと、残された問い
会場全体は、現代アートの展覧会を見ているような構成でもありました。
映像やインタビュー、プロセスを強調する展示、プロジェクションマッピングのような演出。視覚的にも情報的にも、非常に見応えのある内容でした。
これまで私が見てきた、上野の刺繍展や三菱一号美術館のアール・デコ展を経たうえで見た今回の展示は、予想していた以上に多くの視点といくつかの問いを投げかけてきました。
その問いについて、次回はもう少し掘り下げて書いてみたいと思います。
(後編へ続きます)
2025/11/22(土)~2026/2/1(日)
世田谷美術館
開館時間10:00~18:00
観覧料:一般1,700円





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