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日本美術は「入り口」で変わる——蘆雪展・観山展と現役学芸員の本から。

  • 6 日前
  • 読了時間: 4分

📍いつもブログを読んでくださりありがとうございます。


最近、日本美術の展覧会を二つ見に行きました。

長沢蘆雪展(府中市立美術館)と下山観山展(国立近代美術館)です。



長沢蘆雪展

「かわいい」で切り口を変えた日本美術

長沢蘆雪展は開幕当初から大変な混雑で、会期を通じて人気を集めていました。

わたしも会期終盤、ギリギリで駆け込んできました。

もともと日本美術は西洋絵画ほど馴染みが深いとは言えず、どちらかというと「地味・堅い・難解」というイメージを持っていました。ところがこの展覧会の切り口は、現代の「かわいい」文化やキャラクター愛、いわゆる「推し」カルチャーに寄り添い、「犬」をクローズアップするというもの。花鳥風月や人物といった日本美術の定番モチーフとは一線を画す、新鮮なアプローチでした。

こうした新しい視点で見ると、日本美術にはまだまだ発見できていないものがたくさんあると気づかされます。西洋絵画や海外からの大型企画展に匹敵する展覧会が、日本美術でも十分に実現できるということを実感しました。


💬2026展覧会レポート#31|春の江戸絵画まつり 長沢蘆雪@府中市美術館



下山観山展

超絶技巧と、人や作品のつながり

一方、下山観山展は本流の日本画の超絶技巧を正面から見せながら、日本財界との人脈やつながり、そしてイギリス留学時の作品の里帰りなど、展覧会の切り口にオリジナルな視点が盛り込まれていました。

展覧会グッズとしてぬいぐるみになったのは「獅子」。

《獅子図屏風》に描かれた、白い身体に琥珀色の鬣を持つ獅子のぬいぐるみは、完売していました。


💬2026展覧会レポート#34|下村観山展@東京国立近代美術館



展示替えのこと

知っているようで知らなかった話

今回訪れた二つの展覧会では、どちらも前半と後半で展示替えが行われていました。

来客数の増加や戦略的な演出のためではなく、「必要だから」というのが理由で、これも今回初めて知ったことです。

日本美術の作品はきわめてデリケートな素材と画材で描かれているため、照明・湿度・温度の影響を受けやすく、展示できるのは1ヶ月程度が限度。展示後は最低でも1年間、作品を「休ませる」必要があるそうです。知っている人には当たり前のことかもしれませんが、意外と知らない人は多いのではないでしょうか。




📚「そもそも日本美術って何?」

『学芸員が教える日本美術が楽しくなる話』

  • 著者:ちいさな美術館の学芸員

  • 出版年:2025年

  • 出版社:産業編集センター


こうした企画展の優れた切り口や視点に興味を持ち、手に取ったのが『学芸員が教える日本美術が楽しくなる話』(現役学芸員・美大講師による著書)です。

「そもそも日本美術って何?」というところから、技法・ジャンル・背景・意図、日本美術史やスター作家・名品・逸品へと話が続きます。詳しく知る前の段階でつまずかないよう、語り口はやわらかく丁寧で、ページをめくるのに苦労しません。

展示替えの話もこの本で教えてもらいました。


最終章「美術館へ行ってみよう!」が特におすすめ

とりわけおすすめしたいのが、最後の章「美術館へ 日本美術を見に行ってみよう!」です。美術展によく行く方にも、たまに行く方にも、経験値を問わずに刺さる内容だと思います。


現役学芸員がすすめる鑑賞のポイントや、「これはしなくてもいい」という気づきが、自分の中の謎ルールをほぐしてくれます。

鑑賞はもちろん個人の自由。どう見ても自由です。

でもわたし自身、自由であるがゆえにそれが負担になり、疲れてしまうという経験を重ねてきました。全作品を一点一点じっくり見なければ、最初から順番に回らなければ、キャプションを読まなければ——そんな「なんとなくのルール」に縛られている感覚です。


限られた集中力をどこで使うか、脳と身体の疲労をどうコントロールするか。

この章はそのヒントをうまく言語化してくれています。

この章から読み始めるのもありだと思います。



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