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2026展覧会レポート#61|ふたりのアフリカ、手仕事の宇宙 人類学者・川田順造と陶芸作家・小川待子コレクション@世田谷美術館

  • 5 日前
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更新日:3 日前

📍いつもブログを読んでくださりありがとうございます。


「針と糸を巡る旅」と称して、針と糸・刺繍・服飾・テキスタイル・手仕事・暮らしと美をテーマに、美術館や展覧会を巡るシリーズをnoteで行っています。

針でも、糸でも、土でも、木でも、人の手が素材に触れ、時間をかけて生まれるものへの眼差しが、このシリーズを動かしています。

久ぶりの今回は世田谷美術館「ふたりのアフリカ、手仕事の宇宙 人類学者・川田順造と陶芸作家・小川待子コレクション」展へ行ってきました。


💬見に行く前に見どころをまとめています。



2026年7月11日(土)〜9月6日(日)|「ふたりのアフリカ、手仕事の宇宙 人類学者・川田順造と陶芸作家・小川待子コレクション」|世田谷美術館
2026年7月11日(土)〜9月6日(日)|「ふたりのアフリカ、手仕事の宇宙 人類学者・川田順造と陶芸作家・小川待子コレクション」|世田谷美術館


展覧会の概要


口頭伝承の社会を調査するために西アフリカ・ブルキナファソに滞在し、川田順造と同行した小川待子が、現地から持ち帰ったさまざまな手仕事の品、約350点を一堂に紹介する展覧会です。1972年から3年半にわたる現地滞在で、夫妻は草編みや土器づくりなど、生活に根ざしたものづくりの技術を調査しました。



記録フィルムやスケッチ、絵本の展示


夫妻がその地を訪れたときの様子を記録したカメラ2台とそのフィルムや、小川が携帯した小さなスケッチブックやドローイングを見ると写真が写さない、手と眼を介した現地の生々しさが記されいて面白いと感じました。また協同制作の絵本や、川口の著作を集めた本棚も展示していました。



会場に並ぶ手仕事の数々


広い会場には、ひょうたんから作った匙や楽器、草編みのかごやアクセサリー、木彫の仮面、土器、鉄製品や、藍や泥で染めた布や革製品、椅子や板絵が展示されていました。



夫妻を魅了した「布」、そして失われゆく土器の記憶


中でも夫妻が多く集めたのは布です。布は壁面の高い位置から吊るされており、その大きさと重さ(厚手のしっかりした素材)を感じました。白・黒・赤を基本とした布製品からは、シンプルで温かみのあるフォークロア調のデザインがオシャレに見えました。


全体的に、セレクトされた品々が夫妻の美的センスを反映してか、どれも民藝店のセレクトショップのような雰囲気。観光客用のお土産として売られているものとは違い、日常品として使われた、素朴な造形と最小限のデザインでした。


夫妻が1972年から3年半(1975年頃)に現地を訪れたときに、土器を作る技術は失われつつありました。再訪したときにはもう作られていなかったそうです。放置されていた土器をを小川が譲ってもらったという品々も展示されていました。よく持ち帰って来たなというくらい大きい土器もあります。夫妻が見届けた「消えゆく手仕事」の記憶が宿っているように感じました。



最終章「海の見える家――ふたりのアフリカ」


最終章「海の見える家――ふたりのアフリカ」では小川待子自身が空間ディレクションを手がけ、自宅の"再現"ではなく"再解釈"として100点超の品々(儀礼用仮面、椅子、太鼓、絵画など)を配置した、本展の中でも特に見どころとされているフロア。真っ赤な壁紙を背に、仮面や椅子、オブジェや太鼓の存在を引き立たせていました。細々した品はガラスケースに納められ、その品々と同列に、小川自身の陶器作品《結晶と記憶》も展示されていましたが、あまりに溶け込んでいて最初それとは気付きませんでした。


階段状になった展示台には木製の椅子が並んでいました。数少ない出品になったツインズ・セブン・セブンの絵画は、どれも民族的でこういう風には描けない、と正直思いました。



アフリカの手仕事にふれて


今でこそ、アフリカ地域の民藝品やファッションは、それを見ただけで色彩や雰囲気を感じることができますが、夫妻が訪れた当時は一般的な理解や地域の品々のその色彩や伝統品に注意を払うことはなかったと思います。


初めて大きな会場で、アフリカの手仕事をまとまって見ました。

思いのほか、見たときのカルチャーショックはなく、どれもが現代的に見えました。

「針と糸」シリーズを始めてから、日本の民藝北欧のテキスタイル中央アジアと、まだまだ数は少ないけれど、それぞれを見てきて、西アフリカ地域のもつ、はっとするほど鮮やかな色彩と、アフリカの土の色や、少ない要素で描き表す動物や人間の形の原初的な造形は、隙があり可愛らしさがありました。威圧的なものはなく、どこかひょうきんでもあります。


その土地に行ったことはないけれど、どこまでも続く大地と空と地平線を感じる造形でした。



💡あわせて観たい、同時開催の常設展


本展と同じチケットで鑑賞できる「ミュージアムコレクションⅡ 気になる、こんどの収蔵品―作品がつれてきた物語」では、池田満寿夫(1934–1997)の代表作20点が展示されています。池田は、詩人・美術評論家の瀧口修造が企画を手がけていたタケミヤ画廊での銅版画展への出品をきっかけに、加納光於や野中ユリらと親交を結びました。その後、1962年の第3回東京国際版画ビエンナーレ展で東京都知事賞を受賞し、審査員だったウィリアム・S・リーバーマンに見出され、1966年には32歳でヴェネツィア・ビエンナーレ版画部門国際大賞を受賞。世界的なアーティストへと成長していきました。


先日観た「瀧口修造展」が、世田谷美術館の収蔵品ともつながっていてそのタイミングに嬉しくなりました。


会期:2026年7月11日(土)〜9月6日(日)

休館日:毎週月曜日 ※7月20日(月・祝)は開館、翌7月21日(火)は休館

会場:世田谷美術館1階展示室

開館時間:10:00~18:00(入場は17:30まで)

入場料:一般1,400円

💡ぐるっとなび提示で200円引き。



🪞作家プロフィール・会場構成・主な出品作品

公式サイトとや関連情報をもとにまとめています。


川田順造(かわだ・じゅんぞう)1934–2024

東京生まれ。人類学者。東京大学教養学部教養学科卒、パリ第五大学で民族学博士号取得。東京外国語大学教授、広島市立大学教授、神奈川大学大学院教授などを歴任し、東京外国語大学名誉教授。ヨーロッパ・西アフリカ・日本という3つの視座から文化を見つめる「文化の三角測量」を提唱し、口頭伝承が息づく社会をフィールドワーク。エッセイの名手としても知られ、『無文字社会の歴史』『口頭伝承論』『サバンナの博物誌』など著書多数。2021年文化勲章受章。2024年12月逝去。


小川待子(おがわ・まちこ)1946–

北海道札幌市生まれ。東京藝術大学工芸科卒業後、パリのエコール・デ・メチエ・ダールで陶芸を学ぶ。1972年から3年半、夫・川田の調査助手として西アフリカ(オート・ヴォルタ=現ブルキナファソ)に暮らし、現地の原始的な土器制作技法を研究。帰国後、「かたちはすでに在る」という考えのもと、ひび・欠け・ゆがみといった要素を造形として昇華させる独自の陶芸表現を確立。1992年タカシマヤ文化基金新鋭作家奨励賞、2001年日本陶磁協会賞、2008年芸術選奨文部科学大臣賞など受賞多数。作品はメトロポリタン美術館、東京国立近代美術館、サントリー美術館など国内外に収蔵。



会場構成

セクション

内容

イントロダクション:いろどる――赤、白、黒

サバンナの土や草木で色づけされた草編みや革小物、布などを紹介

第1章:アフリカとの出会い

1960年代の川田とアフリカの出会い、夫妻で訪れた北アフリカ・チュニジア起点の「マグレブ」紀行。小川によるスケッチを初公開

第2章:サバンナに暮らす

「ひょうたんの器」「草を編む」「土器をつくる」「火の熱さ」の4セクション。ひょうたんの椀、儀礼用楽器・太鼓、草編みかご、素焼きの壺、真鍮のブレスレットなど

第3章:アフリカの色とかたち

「布」「革」「ビーズ」の3セクション。藍染めや泥染めの布、革製クッション、交易用・日常使いのビーズなど

第4章:海の見える家――ふたりのアフリカ

川田・小川夫妻の自邸を、小川自身が"再解釈"して構成。儀礼用仮面、椅子、木彫り人形、太鼓、弓矢、絵画など100点超



主な出品リスト(公式サイト掲載分)

  • 《儀礼用仮面》ブルキナファソ、1970年代収集

  • 《男子成人儀礼用楽器》マリ、1970年代収集

  • 《繕い入り鉢》ブルキナファソ、1970年代収集

  • 《壺》ブルキナファソ、1970年代収集

  • 《平底かご》ブルキナファソ、1970年代収集

  • 《藍染め腰布継ぎ合わせ》ナイジェリア、1970〜80年代収集

  • 《赤腰布》ブルキナファソ、1970年代収集

  • ※すべて川田順造・小川待子コレクション(撮影:渞忠之)


全出品リストは美術館公式サイトの出品リストPDFで確認できます。



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